2017年7月21日金曜日

今後5年間の日本の経済と市場

1:棚ぼたの恩恵が来る訪日外国人観光客関連産業
今後5年間は世界中からアジアに向かって観光客が訪れる国家的なセレモニーが連続する
1.2018年:韓国平昌冬季オリンピック
2.2020年:東京オリンピック
3.2022年:北京冬季オリンピック

韓国や中国に来たついでに日本にも行こう、という外国人観光客は一定数存在するが、それは現在の「訪日外国人観光客の将来予想」には織り込まれていない。
しかも、
ハシゴをする外国人は「お金と時間にゆとりのある富裕層」が多いので、人数当たりの日本国内消費への貢献は大きいだろう。

東京オリンピックに向けた財政出動は、「膨れ上がるオリンピック予算、不足する財源」という状況の中で実施されるので、オリンピック後の反動減不況に対応する経済対策は「掛け声はあるが、現実の効果のある真水部分は少ない」というお寒い事態が予想される。

それを緩和してくれるのが、冬季北京オリンピック時の棚ぼた的な訪日外国人観光客である。

訪日外国人観光客が日本経済に与える好影響は急速に拡大してきた。
2016年の旅行収支は4兆円の受け取り超過になっている。
つまり4兆円分、GDPを押し上げているのだ

(注) 旅行収支とは、日本人旅行者の海外での消費を「支出」、訪日外国人の日本での消費を「収入」とし、収入から支出を引いたもの。国際収支の中の貿易・サービス収支の一部

2:指をくわえる日本企業
2021年の中国共産党100周年祝賀に向けた「一帯一路(One Belt One Road)」関連の長期巨額投資に関して、その一部を日本企業が受注すると期待できるが、おそらく受注のほとんどは中国企業になるだろう。

習近平が推進している国有企業改革は大量の失業者を発生させる
彼らを吸収する雇用の受け皿が必要だ。
「一帯一路(One Belt One Road)」関連の長期巨額投資は、まさにその受け皿としての需要だ。
国有企業改革の過程で
失業した労働者を引き受けてくれる受け皿企業に一帯一路(One Belt One Road)」関連の仕事を受注させることは政治的な合理性を持つ

日本企業は、国営企業で働いていた低能力労働者を雇用するとは思えないので、政治的な観点からは優先的な受注先には選ばれないだろう。

下図:中国の目指す「一帯一路、One Belt One Road」構想

受注できなくても、道路や港湾といったインフラ建設&整備に使う建設機械の販売(=コマツなどの建機の販売増加)を期待する投資家が多い

大型で高機能・高価格のコマツなどの製品は、鉱山開発などに使われる場合は競争力が高いが、インフラ建設に使われるのは、中低価格の中小型の建機が主流だ。
そして、この商品分野では中国企業(例:SANY)の伸長著しい。

下図は、中国市場における建機シェアの推移

「一帯一路(One Belt One Road)」関連投資は、2018年ごろから2022年ごろまでの長期の財政支出になる。

その5年間の受注から恩恵を受ける建設関連の中国企業に、国有企業改革で生じる失業者を吸収させる、それが「一帯一路(One Belt One Road)」関連投資の隠れた目的だろう。


3:内需サービス、中小型企業
今後の日本経済においては華やかなセレモニー関連(東京オリンピック、訪日外国人観光客)の恩恵を受ける内需サービスなどのセクターは今後もさらに活躍の場が広がりそうだ。

一方、かつての日本の経済&企業業績のけん引役だった大型輸出企業の環境はやや厳しいと推定される。

輸出だが、
2012年以降の円安局面でも「量的な拡大」は起こらなかった。(下図参照)
輸出企業は円安の分だけは利益を増やすことはできたが、
円安を梃に量的な拡大を実現することはできなかった

細かく実態を見れば、量を伸ばした企業と減らした企業が混在し、全体合計では量は増えなかったという事だろう。

シャープや東芝に代表される消費者向け家電セクターは、中国やアジア企業が急速に力をつけた結果、日本企業のシェアが侵食され利益を出せなくなっている
それは1970年代後半から1980年代に
欧米の家電メーカーを撤退させる勢いで伸びたかつての日本メーカーという構図と同じであり、歴史は繰り返しているに過ぎない。現在進行中の状況は今後も継続するだろう。
 
日本メーカーが進出して以降の欧米各国の産業構造の紆余曲折を参考に、日本も体質改善&産業構造の切り替えをすることになる、しないという選択肢は衰退の加速を意味する。

その体質改善&産業構造の切り替えだが、
既存企業が反省して変化改善するよりも、新興企業が伸びることで国全体の体質改善が進む一方、既存企業は縮小&破たんに直面するという状態が歴史の教えるところだ。
縮小&破たん企業の雇用者は、全体合計では新興企業関連に吸収されることになる。

内需サービス産業は、
1:増加する外国人観光客が生み出す追加的な需要
2:高齢化社会が生み出し続ける高齢者関連の需要
3:加速する
IT化やサービス化に関連する需要
・・・これらを背景に活況が続くだろう。

そのような需要を吸収して伸びていくのは、フットワークの軽い中小企業、変化に素早く対応できる創業者社長の企業(ほとんどは新興企業)だろう。それも歴史の教えるところだ。


3:独りよがりの製造はIOTの進展で苦労する
IOTが進むと現在よりも少ない工作機械の数で、現在と同じ量の生産が可能になる。
IOTが進むと、どこの工場に余裕があり、その工場に製造を振り向けるには原材料や部品をどこから送り付ければ良いか、完成品を運び出すトラックをどう手配するか、などという一連の製造プロセスが毎時毎分ごとに再計算される。

この製造プロセス再計算作業は、関係するすべての工場内のすべての製造マシンに設置されたセンサーIOTの先端部分)から自動送信される稼働情報を中央指令センター・システムが収取&分析し、即時に判断を下す
このようなプロセス・スケジューリング管理計算はコンピューターの得意分野であり、しかも日進月歩で能力が向上している

職人気質の「良いものを作れば自然に売れる」とか、「作りたいものを作る」という昔気質の工場は大量生産システムの枠外で
独自の付加価値を追求するビジネスをすることになるだろう。

「日本は製造業こそが第一」とか、「製造業立国こそが本筋」という記事がメディアでは散見されるが、製造システムをコントロールする立場に立てる工場(=製造企業)は少数だ。
多くの工場は大量生産システムの内部で生き残るために巨大システムの傘下に加盟すること必要になる。

海外工場との連携も高まることが予想される。
Connectivity、あなたの工場はつながりますか?

これがますます重視されるだろう。

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