2015年12月24日木曜日

紙メディアは、情報の質の高さと正確性では優勢を維持する

紙の情報メディア(本、雑誌、新聞)は、
1:情報伝達の「速さ」をネットに譲渡するが、
2:綿密な調査や熟慮した結果から生まれる情報の質の高さと正確性では優勢を維持できる

下記は、2015年12月24日の日経新聞



顧客ターゲッティングという部分で紙メディアの選別がこれまで以上に進むだろう。
1:なるべく多くの読者を獲得するビジネスは、大衆娯楽路線を深めるだろう

2:特定のグループ(スポーツ、映画、音楽、絵画、歴史、経済、投資など)に絞り込んで、その分野でシェアを追求するビジネスも強化されるだろう。

3:中途半端なものは、大衆からも特定グループからも見放されるだろう。

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2015年12月13日日曜日

2016年を考える : 目次

*** 2016年を考える : 目次 ***


第一部:経済や社会のメガ・トレンド




第二部:世界共通の投資環境




第三部:米国株式の投資環境




第四部:中国株式の投資環境




第五部:日本株式の投資環境






第六部:資産配分

1:資産配分

2016年を考える_14_第六部:資産配分

*** 2016年を考える_14 ***

第六部:資産配分

(1)一足先にデフレ懸念を脱出した米国経済
米国FRBは、「米国経済がデフレの危機から脱出し、正常な状態に向かいつつあると認識し、超緩和政策の終了に移行しつつある。

一方、欧州・中国・日本は、デフレ克服の道半ばであえいでいる。


株式相場のサイクル的に言えば、米国株式は金融相場から業績相場に移行する。
業績相場では、上昇する金利を背景に、徐々にPERが切り下がるので、「EPS×PER=株価」を反映して、EPSの上昇ほどには株価が上がらなくなる。

また、金融相場では「中央銀行の緩和」が主たる株価形成要因であったものが、業績相場では個別企業の業績予想に投資家の注目が移る。

欧州・中国・日本の株式は依然として金融相場の中にあるが、日欧は既に大幅な緩和を実施しており、今後の追加緩和の糊代は限定的である。

一方、中国の金利レベルや銀行の預金準備率は依然として高止まりしている。また通貨安も微々たるものに留まっている。
2016年の金融緩和は中国がもっとも大きくなるだろう。

欧州・中国・日本は金融相場の中にあるが、緩和ファクターからすれば中国株の上昇余地が大きいと考えられる。

(2)お金は余っているが、先進国内でぐるぐる回っている
世界のお金の流れという観点では、金余りの先進国から資金不測の新興国へ資金が循環せず、先進国内に留まっているのが現状だ。


上図の下段は、新興国指数の先進国指数に対する相対パフォーマンスだが、2010年9月をピークに相対劣後が始まって現在に至っている

新興国株・資源エネルギー&重厚長大産業の壮大なバブルの崩壊にともない、資源エネルギー、農産物といった商品市場や新興国から大量の資金が逃げ出した

その資金は、先進国の株と債券の中をグルグル回っている。
 「新興国で大きな設備投資を実施するために先進国から巨額の資金が新興国に流れ込む」というフェイズには程遠い状況だ。

 

上図は、経済と投資の活動の進捗を図示したものだが、①金融緩和の開始、②低下する金利環境の中、投資家が残っている高金利に群がる、③通常の投資案件では金利やリターンが低すぎるので、リスクの高いハイ・イールド債券に資金を投じたり、M&A、IPO、未公開株投資などがブームになる、という推移になる。

現在は③まで進んできたが、なかなか次のフェイズである新興国への投資には踏み切れない状態でとどまっている。

(3)パフォーマンスの鈍化が予想される2016年
先進国の株式パフォーマンスは、2009年以降は比較的好調であり、2年連続で不振になることはなかった。

しかし、11月末の状態のまま年末を迎えることになると、2014年、2015年と連続で冴えないパフォーマンスになる。


2015年は米国の緩和終了による米国経済の腰折れ不安と、中国の経済鈍化が世界経済に及ぼす悪影響懸念、そして中東の不安定化とISのテロの拡散という投資家を不安にさせる環境から抜け出せないままの1年だった。

株式市場は「知ってしまえば、好材料であれ悪材料であれ、織り込み終了」となる。
その意味では、米国の緩和終了と、中国の経済鈍化は投資家全員が机上で確認できる事実となったので、2016年はこの2点は悪材料としては後退するだろう。


(4)資産配分
これまで記載した事実と推定をベースに考えると・・・・

(1)世界の株式市場は、米国の緩和の終了を契機に2009年からの平均パフォーマンスよりも低い可能性がある。

(2)債券の金利は低すぎる

(3)円安は望めなくなってきた。
という3点を基本判断としたい。

下図が、2016年に向けての推薦資産配分だ。
2015年9月11日から変更はない。

ポートフォリオの骨子は、
1:円建て:50%、外貨建て:50%
2:債券の代わりとして、Jリートを25%
3:アジアと新興国に関しては、金融緩和余地の大きな中国香港株以外は慎重に考えたい。
である。

推薦資産配分


過去の配分推移は以下のようになっている。


2016年を考える_13_第五部:日本株式の投資環境_4:雇用状況

*** 2016年を考える_13 ***

第五部:日本株式の投資環境_4:雇用状況

(1)急速に改善している雇用状況
メディアでは「賃金が増えない」という報道が目立つ。
しかし、小売業は好調だ。

そのギャップを説明しているのが、雇用者数の増加非正規雇用者の賃金の上昇だ。

 

上図で示したように、2012年から雇用者数が大幅に増加している。現在は年率約2%というハイ・ペースだ。

これはアベノミクスの成功により、企業の景況感と国内消費が活性化したことを受けて、企業が雇用者を確保する動きに出たことが大きい。
2014年には、2020年の東京オリンピックの開催が決まり、建設土木産業も建設現場労働者の確保に走り始めたことも寄与している。

一方、一人当たり賃金は、2014年までは低下を続け、最近になってようやく2010年水準を回復している。

小売業は、「一人当たり賃金 × 雇用者総数 = 支払い賃金合計額」の増加の恩恵を受けている。
(直前レポートに記載したように、外国人観光客と余裕のある熟年世代の消費の恩恵も受けている。)

賃金上昇の主役は、非正規雇用者だ。
下図に示されたように、アルバイトと派遣スタッフの時間給水準は大幅に上昇した。

 

半面、正規雇用者の賃金水準は春闘相場からわかるように、+2%台にとどまっている。

これが、「景気や株は良いのに、私(=正規雇用者)の賃金は上がらない」という不満の背景となっている。


(2)格差が拡大で内部分裂が始まる正規雇用者
「第一部:経済や社会のメガトレンド」で説明したことだが、日本でも該当する。


上図に示したように、
1:好調な内需の恩恵を受けるグループ、国や企業から選ばれて賃金を優遇されるグループは、待遇の改善が継続するだろう。
このグループが、今後の日本の消費のけん引役として大きくなると考えられる。

2:一方、新興国の労働者との競争にさらされ、スキルを身に着ける努力とその成果を達成できないグループは、待遇の劣化が終わらないだろう。このグループは非正規雇用者との競争(仕事内容が同じなのに、賃金だけ高い、という状況にメスが入れられる)も激化するだろう。

こういう状況はまだまだ継続するトレンドであり、その結果、正規雇用者の内部の格差は拡大し、分裂傾向を示すと思われる。


2016年を考える_12_第五部:日本株式の投資環境_3:増える外人観光客

*** 2016年を考える_12 ***

第五部:日本株式の投資環境_3:増える外人観光客

(1)日本の内需は、日本人+外人観光客
メディアでは個人消費(特に家計調査)が冴えないと言う。しかし、個人消費の受け皿である小売業は好調だ。

減少に転じた家計消費統計が正しいのか?
好調な小売業の業績を信じるべきか?


その違いを説明しているのが、
(1)上図に示されたように年間2000万人ペースに到達した
外国人観光客の国内消費への貢献と、
(2)
家計調査のミスリード部分(統計の不正確さ)だ。

<< 外国人観光客 >>
外国人観光客の日本国内での消費(2015年は2兆円を超えた)の多くは、現在の日本の統計では個人消費に計上されない。免税品の商品の購入は「輸出」に計上されているものもある。

しかし、中国人の爆買いで明白だが、小売業の業績には貢献し反映するする。
外国人観光客の国内消費は、GDPを約0.5%上昇させている。
そして外国人観光客の来日人数は、2016年も大幅に増加すると言われている。

<< 家計調査 >>
一世帯4人家族が3人家族になり世帯人数が減ると、一人当たりの消費は同じでも一世帯の家計消費金額は減少する。

家計調査はそれを補正せずに、消費金額が減少したと発表している。
近年は世帯当たりの人数がどんどん減少しているが、家計調査は「減少する一世帯当たりの人数」を無視した単純な家計の消費額のままである。

また家計調査は自己申告制であるが、銀行自動引き去りの毎月の携帯料金やカード決済するネット・ショッピングを計上しない人が散見されると聞く。

これらを考慮すれば、家計調査という統計で消費を判定することはミスリードになる可能性がある。


(2)団塊の世代の消費は堅調
日本の消費を押し上げているのは、外国人だけではない。
団塊の世代を中心とした「旅行ブーム、自分に対するご苦労様消費」はひたひたと増している。

下記は日経新聞の記事であるが、比較的余裕のある層を中心に消費が増加を続けていることがわかる。


今年のお盆休み期間の東京駅の駅中ショップの売り上げは、前年比で+25%という大幅な増加を記録している。

また、ビジネスマンや富裕層が主として利用する新幹線のぞみ号のグリーン車は、55歳以上の女性のグループの利用が増えている。
いわゆる熟年世代の消費の増加は、まさに始まったばかりであると思われる。


2016年を考える_11_第五部:日本株式の投資環境_2:増えない輸出

*** 2016年を考える_11 ***

第五部:日本株式の投資環境_2:増えない輸出

(1)円安で金額増えたが、数量が増えない輸出
日本株の懸念の一つは、大型輸出企業の利益の伸びの鈍化が辛いことだ。

3・11の地震以降、日本企業の輸出数量が横ばいを余儀なくされている。(下図左側参照)

その原因に関しては、
1:アジア勢の追い上げで輸出競争力を失いつつあるとか、
2:巨大地震が起こる日本からの輸入はサプライ・チェーンに支障をきたすリスクがあるので、一定割合を日本以外からの調達に切り替えたから、等と言われている。



為替に関して考えると・・・・

2011
年3.11の震災以降、原発が停止したことから、価格が高止まりしていた原油や天然ガスを大量に輸入することになり、貿易収支が急速に悪化した。

2011年末までは、民主党政権の円高デフレ政策によりドル円は無反応だったが、貿易収支の急速な悪化を反映して極端な円高が修正され始めた。
201211月以降はアベノミクスの円安政策を織り込む形で、急速な円安が進展した。

2015年に入ってからは、前年10月以降に急落が始まった原油価格を受けて、貿易収支の改善が始まり、5月には安倍首相の経済ブレーンの浜田氏と黒田日銀総裁の両氏から過度の円安を牽制する発言が出て、8月からは円安が止まった形になっている。

 

現状は、・・・・
1:原油価格は低位で推移し、貿易収支の赤字は消え、
2:外人観光客の急増や対外投資の収益の増加も相まって、日本の対外収支は「外貨の受け取りが増加」する局面
・・・になっている。

(2)2016年は円安効果が消える

2016年に関しては、

1:イランの原油の増産による価格下落圧力はあるものの、米国のシェールによる価格低下圧力はピークアウトしており、原油価格はボックス圏で上下動すると思われる。

長期的には、過去に原油価格が急落した1985年の後の価格動向(下図赤枠内)と似たような動きを想定している。

 

2:貿易収支に関しては、原油やガス価格の急騰がない限り、赤字の拡大は無いだろうし、一方徐々に増えてくる原発の再稼働もエネルギー要因の貿易赤字を縮小させる

3:外国人観光客の増加は2016年も継続すると思われるので、これに起因する「外貨の受け取り」は、さらに増えるだろ。

1、2、3を考慮すれば、日本側の要因としては、円安要因は消えてしまった状態が継続することになる。

以上から推定されることは、130円という円安トレンドではなく、115円から120円のボックス、あるいは110円程度までの円高を想定しておいた方がよさそうだ。


2016年を考える_10_第五部:日本株式の投資環境_1:長期政権

*** 2016年を考える_10 ***

第五部:日本株式の投資環境_1:長期政権

長期安定政権は、企業が長期的な計画を立案&実施するために必要だ。

政権がころころ変わり、そのたびの金融政策・経済政策が煩雑に変わるようでは、企業は安心して長期的な設備投資や採用増加に踏み切れない


安倍政権は、1980年代の中曽根政権、2000年代の小泉政権に並ぶ長期政権である。

国民の高い支持率を背景に、これまでの政権が実施できなかった政策を法制化し実施し始めている

株価の大幅な回復は、これが起こる事を株式市場が予想した事にも起因している。



2015年12月12日土曜日

2016年を考える_9_第四部:中国株式の投資環境_2:金融緩和と通貨下落

***2016年を考える_9 ***

第四部:中国株式の投資環境_2:金融緩和と通貨下落

(1)高成長から中成長への転換
既に世界第二位の経済大国になった中国、その経済規模が過去のように高成長で拡大することは困難だ。


過去に成長を遂げた国の例にもれず、中国の経済成長ペースは徐々に低下して、「高成長→中成長→先進国なみの低成長」という推移をたどるだろう。

同時に、景気変動の振幅度合いは低下して安定した経済成長に移行することも、過去に成長を経験した国々と変わらないだろう。

(1)高成長から中成長への転換
新興国株・資源エネルギー・重厚長大産業のバブルの崩壊の影響に苦しむ中国だが、その経済対策の遂行を妨げていたのは「通貨の下落を恥とする間違った自尊心」だった。


間違った自尊心を乗り越えて、欧米や日本が実施している経済対策と同様の「正しい経済対」の実施を政府首脳に進言して説得したのが、中央銀行総裁の周小川(Zhou Xiaochuan)だった。

彼は、金融緩和と通貨安という経済対策の王道、特にメンツを捨てて通貨安を実施するよう強く進言して、実施させた。


(2)2016年まで続く金融緩和
中国の金融は緩和されたとはいえ、リーマン・ショックに対応して発動された4兆元の経済対策中のやや引き締められたタイトな水準にとどまっている。

国営企業改革を円滑に進めるためにも、2016年もさらなる緩和が進展し、リーマンショック時の水準まで緩和される思われる。

 


(2)通貨の下落は微々たる範囲に過ぎない
8月に人民元の下落政策が発表されたとき、世界中の業界関係者は「連続的な大幅な切り下げ」を予想した。

しかし、下図で明らかなように、ここまでの動きをみると下落とは言っても誤差範囲内にとどまっている。


2016年の中国は、まずは金融のさらなる緩和が行われるだろう。
それでも効果が見られないなら、人民元のさらなる引き下げを実施するという順番になると推定される。



(2)輸出市場の経済低迷と中国製品の輸出競争力の低下

なお、人民元の長期チャートと外貨準備のチャートを並べて比較すれば、2008年発までの大幅な人民元の切り下げ(下図左のチャートの赤点線)によって、その後は外貨準備の増加ペースが鈍った(下図右のチャートの赤点線以降)ことがわかる。



1.人民元の切り上げによる中国製品の輸出競争力が低下したことと、
2.バブル崩壊後の世界経済の低迷によって中国製品の輸出増加ペースが鈍化したこと、
この両方が同時に悪影響を及ぼしたと推定される。

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2016年を考える_8_第四部:中国株の投資環境_1:国営企業改革

*** 2016年を考える_8 ***

第四部:中国株の投資環境_1:国営企業改革

(1) 地方政府の政治的圧力で温存されてきた非効率企業
中国企業の業績の低迷は、重厚長大産業が低迷しているのが主要因だ。

エネルギーや資源を多消費(=非効率経済)する時代が終わったにもかかわらず、過剰化した生産設備(鉄鋼など基礎資材)が温存されてきたのは、国営企業ゆえ赤字でも各企業の現実の責任者たる地方政府の命令一つで息のかかった銀行から融資を引き出せるからだ。

 

「ゾンビ企業+焦げ付き融資を抱えた銀行」の一蓮托生の解消には2020年ごろまでの時間が必要だろう。

一方、ネットをはじめ、消費は堅調が続いている。
消費統計には「政府の購入するモノ=先進国では「消費支出」に分類されるモノ」も含まれ、綱紀粛正運動の影響で役人の乱痴気騒ぎ的な消費が縮小した影響を受けているが、一般消費は好調である。

(2)重厚長大産業は引き起こしている「中国的デフレ」
企業の物価である生産者物価指数はマイナスを続けている。


この中国版デフレの背景は、過剰設備が続いている鉄鋼など基礎資材産業が、ダンピング生産しているからだ。

国営企業ゆえ赤字でも地方政府の命令一つで息のかかった銀行から融資を引き出せる状態に対して、北京政府は禁止措置を徐々に導入している。

国営企業の改革的リストラの進展によって、過剰設備の解消が見えた時に、中国版デフレは終了するだろう。

(3)国営企業改革は政治闘争
「ゾンビ企業化」した企業をリストラする「国営企業改革」は長年叫ばれてきた。

にもかかわらず、利益なき製品生産が行われてきた背景は、雇用の維持と役人の保身(倒産責任を回避したい)だ。

また、リストラに際して様々な調査が実施されるが、その時に役人の不正行為、賄賂、汚職が露呈することも恐れている。

国営企業改革とは、中国においては、政治闘争と同義語だ。



2016年を考える_7_第三部:米国株式の投資環境_2:片肺飛行と二極化

*** 2016年を考える_7 ***

第三部:米国株式の投資環境_2:片肺飛行と二極化

(1)前回相場と変わらぬ好調さの米国株式
未来のことは予測が困難だ。しかし、過去との比較は参考になる。
上図は、さまざまな懸念が表明されている現在の米国株式のパフォーマンスが、好調だった前回の上昇相場(年率+11.5%+配当金約2.2%=13.7%)と同等の推移を示している。

株式市場的には、米国株式の収益力は維持されていると判断すべきだろう。


(2)商品市場の軟調さを反映した二極化相場
懸念の背景は、バブル崩壊後のファンダメンタル悪化から回復できない資源エネルギーを中心とする重厚長大&素材産業だ。


上図左のチャート(SP500のセクター別チャート)を見れば明白だが、昨年の初夏以降の原油の大幅下落を反映して、SP500指数の中のエネルギー・セクターと素材セクターは急落を演じた。

それを反映して、米国株式はセクター間のばらつきが大きくなっている。いわゆる好調なセクターと芳しくないセクターという状況が長期間継続する二極化相場となっている。

商品市場の大幅な回復、そしてその牽引役である新興国経済の設備投資活動の大復活が当面は可能性が低いという認識がコンセンサスとなっている。

それを受けて、米国株式の二極化相場もなかなか修正されないと思われる。


2016年を考える_6_第三部:米国株式の投資環境_1:住宅と雇用

*** 2016年を考える_6 ***

第三部:米国株式の投資環境_1:住宅と雇用

(1)住宅と雇用が顕在な米国経済
米国のマクロ経済指標はまだら模様だ。良い指標もあるし、芳しくない指標もある。経済が片肺飛行なのだから、それは仕方がないところだ。
しかし最も重要な指標である住宅と雇用は堅調を維持している。


住宅は米国経済を支える最も重要な経済の構成要素だ。
これが崩壊した時にリーマン・ショックが起きた。
それほど住宅は重要ということだ。

上図は、住宅価格推移だが、ゆっくりとした回復ペースを維持している。
一直線ではなく、上がっては少し休む、このイライラするようなペースゆえ、住宅バブルにならずに住宅価格の上昇が維持できるのだ。

下図の住宅販売もゆっくりと回復している。
9・11テロ事件以降、移民に厳しい態度に変わったことから、それ以前のような移民が牽引する住宅需要は弱まっており、今後もゆっくりとした回復ペースが続くだろう。


なお、米国の住宅販売は中古市場(新築の約5倍の取引)が中心だ。
中古住宅販売をより注目すべきだろう。


(2)失業率的には、好景気
5%台の失業率が、米国経済や米国株式市場にとっては好ましい。
4%台に突入すると、通常は金融の引き締めが始まっていた。
引き締めの開始は、その後の景気の持続的回復に対する懸念を生じさせ、株式市場は不安定になったのが過去の通例だ。


11月の失業率は5%であり、2015年12月に16日には「超緩和の終了」が予想されている。


(3)恵まれた地理的環境にある米国
ラッキーという言葉が当てはまるのが米国経済だ。
シェール革命によって「自国の安価な化石燃料」が豊富に使えるようになったことが大きい。
30年先はわからないが、3-5年先までは問題がないだろう。

難民問題に困惑する欧州や、不安定化する中東アフリカ情勢の混乱の影響から地理的にもっとも遠くにある国という点も、政治経済の安定に寄与する。
その安定は、世界の株式の中で米国株のPERが割高グループに入ることを正当化するだろう。