2017年9月15日金曜日

PBRを投資指標にする際の留意点

PBR_1:結局、稼働率
景気が上昇し需要が増えると、受注が増加して工場の稼働率が上昇する。
景気が下落し需要が減ると、受注が減少して工場の稼働率が下落する。
工場や人件費は固定費なので、稼働率の上下は”受注の上下動の率以上の急角度”で、利益を増減させる。

PBR_2:適合&非適合
この考え方に適合するのは、
新規参入の無い世界
製品が変化をしないビジネス

この考え方が当てはまらないのは、
新規参入が激しい世界
新製品開発競争が盛んなビジネス

PBR_3:PBRこそがと言われ続けてきたが
株の世界の歴史では割安株投資こそが王道という言葉が幅を利かせている。
日本では特にその傾向が強い

割安株とは「
Value Stock」の翻訳だ
しかし、誤訳だ
意図的な誤訳だ
証券会社が営業する時に「割安株」ですからと言えば、営業しやすいから、という理由だった

PBR_4 : 参入障壁
稼働率とは工場の稼働率だ
工場の新設には巨額の資金が必要だ
これが過去は参入障壁だった


PBR_5 : 工場はコスト
工場はいったん作ると維持が必要だ
受注が減っても、工場を縮小したり、工員を首にしたりは困難だ。
工場の維持コストは企業にとって重いコストだ


PBR_6 : 工場を持たない製造業
1990年代に工場の外注が進んだ
コストの外出しが目的だった
技術革新のない汎用品から始まった
VTRテープ、カセットテープは、同じ工場で作られて、最終的に
SONYTDKという別企業のラベルが張られた出荷された
シンセンの工場で春山も、そのまんまの光景を見た
 
PBR_7:困ったPBR_1
工場を持つA社、持たないB社、同じVTRテープ企業
PBRは、A社が低く、B社が高い
では、A社に投資すべきか? A社は安いのか?
PBRは、困ってしまった

PBR_8:困ったPBR_2
業界を代表する両社
売り上げ金額が同じ、50億円
工場を持つA社(200億円)、持たないB社(25億円)と資産規模が異なる
資産に応じた株価であるべきか?
利益に着目すべきか?

PBR_:困ったPBR_3
業界を代表する両社、利益金額が同じ(20億円)
工場を持つA社(200億円)、持たないB社(25億円)と資産規模が異なる
利益が同じなので、資産に応じた株価であるべきか?

PBR_10:自社工場の価値
設計と製造は連携している
製造しているから良い設計が可能だ

自社工場だから、新製品の秘密が守れる
委託工場だと・・・

自社工場だから、R+Dの成果としての技術(製造技術)を秘密にできる
委託工場だと、製造技術をライバル社の製品の製造に際して利用される

PBR_11:余談
製造委託と言うと、委託者(設計者)が上で、受託者(製造請負者)が下と思う人が大多数だ。
受託者から見れば、設計をアウトソースしているのだ、という言い方もできる。

PBR_12:設計者と製造者
どっちの儲けが大きいか
寡占が進んでいる方が、儲けやすい
とはいえ、アイディアの発見、それを実現する設計、売れる物にする製造、販売ができてこそ全員が儲かる「輪」になる

PBR_13:利益予想を放棄するDNA
利益予想なんて無理
政治経済の環境はコロコロ変化する
浮草的な利益予想を追いかけずに、かわらないモノ=企業の資産を基準に投資するのだ

PBR_14:安値受注
自社工場を持つ製造業であれ、生産を受注する受託生産企業であれ、工場は固定コスト
稼働させてこそ利益を生む

しかし、苦しくなるとコストぎりぎりでも工場を動かすために受注する。
利益など無くても良い、工場の維持費用だけでも賄えればよいのだ。

もっと苦しくなると、、、将来の正常価格での受注を期待して、赤字受注をする

PBR_15:R+Dの誤解
アィディアがひらめき、それが儲かりそうだから、起業する。
これが一般的な流れ
そして、儲からなくなったら・・・・
1:たたむ
2:もがく

成功した企業が連続で、次の儲かるアイディアを発見して事業化に成功することは稀だ。
普通は「一回休み」すれば「二回休み」になる。

「たたむ決断」が封印された企業は、R+Dすれば儲かる事業がうまれるハズだと信じる。
その成功確率が非常に低いにも関わらず
部門であれ、子会社全体であれ、会社そもののであれ、たためるのは創業者だけだ

PBR_16: 選択と集中の誤解
競争が厳しくなった時、選択と集中という言葉が流行る
正しい選択:3つの子会社から、2社を清算し1社に集中する
誤った選択:3つの子会社それぞれに関して、利益率の低い汎用品から撤退し、それぞれの高級品(利益率が高い)に特化集中する

その理由は、以前ブログに書いたとおり
http://haruyama-shoka.blogspot.jp/2017/05/blog-post_22.html
 
PBR_17 : 高価格帯、高機能品への特化
高級品への傾斜と並んで頻繁に出てくるのが、高価格帯、高機能品への傾斜&特化だ
日本企業が欧米企業に追いつき追い越せと頑張った1970年以降、そして日本企業がアジア勢に押しまくられ始めた2000年以降、いずれも攻める側は低価格品、普及品から攻めてくる。

購入するユーザーからしてみれば、実績のない企業の高価格帯、高機能品など買わないが、安価なものなら「お試し」で買ってくれる。
しかし、安価な分野を侵食されると二度とその陣地は取り戻せない
その結果、攻められる企業は非自発的に高価格帯、高機能品への特化をすることになる

PBR_18 : 高価格帯、高機能品への特化の罠
汎用品、普及価格帯の製品を含めて大量に生産するから、
1:生産技術が磨かれる
2:原材料の調達も大量購入ゆえに安価で調達できる
高価格帯、高機能品は少量しか売れないので、縮小した生産規模では上記の双方を失う可能性が高い

攻める側は、低価格品によって得た利益を武器に、高価格帯や高機能品の値引き戦略を遂行する。かつての日本企業が実行したように、今やアジア勢が同じことをしている。

PBR_19 :低い利益率が参入障壁
参入障壁が高く、業界の変化が少ない方が、同じ上下動が再現されるので、PBRが機能しやすい。
少額資本で高収益、そんなビジネスであれば、みんなが参入したがるので、競争が激しく、一度沈んだら二度と復活できない「万年割安に見えるだけ企業」に突き落とされる。
換言すれば、多額の資本を必要とし、しかも利益率が低いようなビジネスに今から新規で参入しようという企業家は稀だ。低い利益率が参入障壁になるのだ。

利益率が低いビジネスをやっている企業が景気の上下度によって利益が上下動する。そういうビジネスにはPBRが機能しやすい。
ゆえに、こういう企業は循環株(Cyclical Stockと呼ばれている。
景気循環で上下動する、という意味だ。

PBR_20:参入障壁の有効性は、チャレンジャーが決める
多額の資本を必要とし、しかも利益率が低いようなビジネスに今から新規で参入しようという企業家は稀だが、例外的にパワフルな新規参入が起こる時がある。

国家として、その産業が必要だから育成すると国策で決めて大規模な援助を実施するのがその代表例だ。
歴史的には、追いつきたい国である新興国・途上国がそういう政策を採用してきた。
古くは明治政府の富国強兵政策、
20世紀では中国の改革開放政策、そのたびに「新興国ブーム」が起こってきた。
 
新興国にチャレンジされる先進国はたまったものではない。
鉄、非鉄、造船、海運など新興国が国策で頑張る産業は、最新鋭の工場ほど低コストで高品質の製品が製造できるからだ。しかも最新鋭の製造設備を国家の補助金が後追いするとなれば、もう先進国は降参するしかない。もしくは輸入制限などで不自由貿易政策を実施することになる。
PBR_21:困ったら原点に戻る
原点とは利益だ
儲かる、利益が出る、だから投資をするのだから

利益が予想できないから、資産を使う、それは間接プレイだ
利益を使うのが直接プレイだ
直接プレイの難易度は高いかもしれないが王道なのである

PER_22 最後
どんな投資基準で判定しようが、その企業を分析するのが目的だ。
春山は、その企業が、「仕入れ、製造加工、販売」のどこで他社と差別しているかを理解することに最も力を入れている。

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