2019年12月8日日曜日

ポジション・トークは相場の体温計

ポジション・トークには、2種類ある
1:株を保有している人が発するポジション・トーク
2:株を持っていない人が発するポジション・トーク

ポジション・トークを発するのは人間だ
人間は感情の生き物だ。そして人間は心配性だ。
いまでこそ人類は地球上を我が物顔で闊歩しているが、地球上に人類が生まれてからの大部分の時間は小さくて弱い哺乳類だった。だから人間のDNAには、「死ぬな、生き残れ、逃げろ」という兎にも角にも(経済算数を度外視して)危機を回避する行動をとるように脳に刻み込まれている。

その結果、生きるか死ぬかとは無関係な投資の世界であっても、投資家の全体像を俯瞰すれば、「平時は何かと心配してポジションを持たない」という心配派が多数を占めている。(下図参照)



だから、平時に良く見られるポジション・トークは・・・
株を保有している人が発するポジション・トークは、「少し心配だけど、もう少し保有を継続してみよう」という言動になる。
一方、株を持っていない人が発するポジション・トークは、そんなに株価が上がっていないにも関わらず「もう高くなった、これはバブルだ、崩壊するリスクがある、下がったら買おう」という言動(=買いたい弱気、と業界では定義されている)に陥る傾向がある

春山が受け取るメッセージや質問を観察していると、下図にあるような推移をたどることが多い。
相場初期:何だこれ、、、でも無視、軽視、、自分では調べようとしない
中期:まだ買っても大丈夫でしょうか?
熟れ頃:これっきゃないですよね!

相場が進むにしたがって、心配派が徐々に強気に変化するので、株価の上昇角度は徐々に急角度になっていく



ポジション・トークの相場に与えるインパクトと言う点では・・・
株を持っていない人がいくら心配しても相場には影響がない。株を持っていない人からは売りが来ないからだ。(空売りはこの場は除外・・・・)
株を持っている人が心配すると相場に影響がある。売りが来るからだ。

相当数の心配派が強気になって株を保有した後に何か悪いニュースが出ると、「にわか強気派=旧心配派」は一気に心配派に逆戻りする。
株を持っている「にわか強気派=旧心配派」の心配は一気の売りを呼び、相場は急落する。
だから、下げは上げの三倍速になる。



相場のピーク付近では、心配派の強気への転換が急速に進む。
これを買っていれば安全だ、みんなも買っている、これっきゃない!という雰囲気、つまり投資に対する安心感がまだ投資をしていない心配派に急速に広がるからだ。
この安心感は、まさに株を持っていない人が発するポジション・トークであり、相場のピークで出現する。
まさに相場の体温計が急上昇するのだ。

そういう相場の体温を観察しながら株の保有を続けていた元祖強気派は、徐々に利益確定の気持ちを持ち始める。彼らのポジション・トークの代表的なものは「ちょっと心配だから、ポジションを軽くしたい」である

2019年12月5日木曜日

米国経済&米国企業の強さが維持されている

トランプは何かディール(成果)を達成したか?
過去の政権が行ったディールを壊したり、壊すために大声で喚き散らしたり、そういう言動が際立っている。

国際政治の分野では、北朝鮮、中国、イラン、シリア、メキシコ経由の移民問題、いずれも自画自賛の言葉はあれど達成の事実は見えない
NATO問題では欧州でフランスと喧嘩状態だし、世界中にある米軍基地の税制負担の大幅な増加(3~5倍)を基地の所在国に求めている。

国際経済の分野では、世界中で摩擦や混乱を引き起こしており、その収拾の目途が立っていない。米中貿易戦争の悪影響は長期にわたって世界経済を減速させている。

それでも米国経済や株式市場が堅調に推移しているのは、米国経済や米国企業の潜在力の強さが発揮された状態が維持されているからだ。



そして春山が重要だと思う点は、トランプのまき散らす懸念があるので、世界経済も株式市場も前のめりのイケイケ経営やバブルにならずに腹八分目(=余力を残した状態)で巡航している、ということだ。

この不思議なバランスは2020年も続いていくと思われる。



2019年11月12日火曜日

革命とは新しい政治リーダーを決める政治的な行為

市民と離反した革命運動は破たんする
革命とは新しい政治リーダーを決める政治的な行為だから

政治のリーダー(=為政者、支配者)は、支配されるもの(=被支配者)の同意の上に成立する

デモ派の一定グループの目的は、都市機能を破壊することになっている
天安門の時は破壊行為は無かった
現在の香港では破壊行為が行われている
世界は破壊行為に賛意を表明できないだろう

参考:天安門事件(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AD%E5%9B%9B%E5%A4%A9%E5%AE%89%E9%96%80%E4%BA%8B%E4%BB%B6?fbclid=IwAR3dkA8Z50BbFuSNRFOo8UV7uu_Z8ZaTpK-zHUm9kcJos57r-7l3Jsfo-Gw)

中華系民族には「天命」という思想が根付いている。
市民と離反した革命運動に対して、市民は天命を感じないだろう

そもそも学生グループは新しい政治リーダーを提示していないのだから、将来に見えるのは混乱だけだ。その中途半端さを香港の生活者は感じているのだと思う。

香港問題は処理せざるを得ない段階に起きた
処理とは政治的な問題だ
内政干渉はできないので、欧米は口で不満を表明するにとどまる
トランプは貿易交渉を中断するか、すると脅すだろう


天安門事件前後の日中米の株価推移は下図



市民と離反した革命運動は「浅間山山荘事件」のような結末になると思う

浅間山山荘事件(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%82%E3%81%95%E3%81%BE%E5%B1%B1%E8%8D%98%E4%BA%8B%E4%BB%B6)


2019年11月7日木曜日

春山ルール 49   : 投資家は順張りが好きだ

全体がワーッと上がる時、出遅れは無視される
全体が上がって小休止になると、出遅れに視線が移る

投資家は順張りが好きだ
上がっている銘柄がさらに上がると思う傾向が強い

全体がワーッと上がる時、投資家は出遅れ銘柄に投資する必要性を感じない

下がっている銘柄は不振業績、失望決算など、理由があるから下がっているのだ
そういう銘柄がリバウンドすると期待して投資をするには、良い銘柄が結構上がって高値警戒感が生ずる必要がある。

それが循環物色という投資家の心のリズムだ

2019年9月30日月曜日

セミナーの資料作成は映画制作 連載は4コマ漫画

セミナーは2時間とか4時間で起承転結が流れるように全体の推敲をしながら資料を練り上げていく

連載は、その1回だけでも「なるほど!」、「へーっ、そうなんだ」、「面白い」という話題を2分程度で読める長さで作成するのだが・・・・

同時に前後の数回で、一個のテーマを起承転結させるような入れ子構造になるように工夫する。

そして連載全体の約50回の全体を通して、大きなテーマに関する筆者の解釈や意義を伝えるようにする。

だから連載はセミナー資料よりも作成に神経を使うし、疲れるのです。

セミナーの資料作成は一回で鑑賞してもらう映画の制作
連載は毎日新聞に掲載される4コマ漫画
そんな感じかなぁ?



9月は、第15~27回の部分を4個のパート(章みたいなもの)に分割して、その上で各パートを構成する個別の連載を書くという、結構複雑な作業に直面したので、筆が止まっていた。

でも、昨日と本日で一個のパートに関してブレイク・スルーできた。
ようやく少し先が見えた。

停滞の9月のあと、怒涛の執筆の10月になりそうだ

2019年8月30日金曜日

目次:春山昇華の豊健活教室

最新記事:最新記事はこちら



1:第1回 リーマンショックから10年が経過した
2:第2回 80年前の失敗
3:第3回 民間が出てきたら、政府は引っ込む
4:第4回 正常化には痛みが伴う
5:第5回 利上げを正当化できる経済なのか?(自動車)
6:第6回 利上げを正当化できる経済なのか?(住宅)
7:第7回 利上げを正当化できる経済なのか?(雇用)
8:第8回 パウエルFRBの利上げの論理
9:第9回 黒田日銀の実質利上げ
10:第10回 さらなる利上げが可能な経済なのか?(日本の雇用)
11:第11回 さらなる利上げが可能な経済なのか?(日本の物価)
12:第12回 さらなる利上げが可能な経済なのか?(日本の金利)
13:第13回 長期金利のメガ・トレンド
14:第14回 バラマキが終わって夢から醒めると 
15:第15回 効率性と経済合理性 
16:第16回 借金は企業の“しもべ” 
17:第17回 企業は天国をエンジョイし、強欲へ” 
18:第18回 リーマンショックと中国の戸惑い
19:第19回 経済重視へと舵を切る中国
20:第20回 金利のトレンドが変わるなら
21:第21回 中央銀行の金融政策と政治の衝突
22:第22回 金利の決まり方(前編)
23:第23回 金利の決まり方(後編)
24:第24回 お金の貸し借りと金融政策
25:第25回 債券投資家という怪物
26:第26回 金利上昇時の株価の反応(1)
27:第27回 金利上昇時の株価の反応(2)
28:第28回 金利上昇時の株価の反応(3)
29:第29回 金利が上昇すると知って慌てた日本株
30:第30回 金利上昇時の株価の反応パターン
31:第31回 内部は松竹梅
32:第32回 金利上昇と新興国(1)
33:第33回 金利上昇と新興国(2)~そもそも信用されない新興国~
34:第34回 金利上昇と新興国(3)~金を貸す方に殺生与奪の権利がある~
35:第35回 リーマンショックの犯人(1)~金融政策への過度な依存~
36:第36回 リーマンショックの犯人(2)~景気回復の主役を押し付けられた銀行~
37:第37回 リーマンショックの犯人(3)~銀行に暴走を強いる強欲投資家~
38:第38回 リーマンショック後の10年間の総括 (1)~暴走した強欲資本主義への非難と規制~
39:第39回 リーマンショック後の10年間の総括(2)~寛容性を失った民主主義と小さく分断される社会~
40:第40回 これからの20年間を考える(1)~自由を束縛される資本主義~
41:第41回 これからの20年間を考える(2)~分断される市場と低下する利益率~




2019年8月17日土曜日

起こっていないバブルは崩壊できない

21世紀の株式の大幅下落はバブル崩壊によって起こっている
現在は崩壊するレベルに成長したバブルは起こっていないので、崩壊による大幅下落相場も起こらない

お金が不足していた1982年以前の時代では、お金が無くなると、金詰まりで景気がとん挫し、景気後退&株式暴落だった。

1982年以降、お金の不足は先進国では起こっていない
むしろ、お金が余り過ぎて金利が下がり過ぎている。
その結果、世界のお金の90%がうごめいている長期債券投資家(主として2年以上の債権に投資する)が希望するリターンが、通常の方法では得られなくなった。
しかし、彼らはその現状を受け入れずに、強欲を維持して無謀な投資に乱舞
する。
その結果発生する債券バブル、これが崩壊して金融経済が混乱する
これが21世紀の懸念であり続ける

2019年8月を観察すれば、以下のようなスライドになる  







昨年までは、次のバブル崩壊時に金利を下げることが可能になるように、政策委金利を正常レベルとFRBが考える水準まで引き上げていた
それが終わったのが2018年だ



FRBの最優先課題は債券バブルの再発防止だ
前回のサブプライム・ローン、不動産証券化商品などの債券バブルの崩壊を再現したくないのだ。

一方、欧州景気の鈍化により、日本に続き欧州がデフレ・マインドに覆われる心配が出てきた

世界経済の最後の砦がUSだ。
US政策金利をある程度下げざるを得なくなった、、バ債券ブルのリスクを認識しつつ




年末までに、まだまだUSの政策金利は下がるだろう

2019年6月28日金曜日

Moving Target

99%の投資家は市場価格を受け入れる立場にあるつまり、投資家は”Price Taker”である
株価は日々揺れ動く
株価に影響を与える投資家全体の考え方、思い、期待と不安の集合体であるコンセンサスが日々刻々と揺れ動くからだ
コンセンサスが妥当株価(fair value)を決めているのだが、それが刻々と変化することを意味する。
投資家は揺れ動く妥当株価(moving fair value)と追いかけっこをしているのだ。

コンセンサスの振れ幅は、個々の企業で異なる
総じて言えば、日本株の振れ幅は米国株に比べれば大きい

2019年6月20日木曜日

懸念で下がり、希望で上がる

6月5日にショートを閉じた。
そして、6月8日に年末までに∔1300円程度の上昇がありそうだと判断した。
その後の推移と現在の考え方に関して、今日はフォローアップをしてみたい。

まずは、過去の復習・・・・
~~~6月5日~~~


~~~6月8日~~~


























その後は危なっかしい場面もあったが、米国株の堅調さに触発されて戻り相場を演じている
ここまでは、懸念で下がって、希望で戻る、、という展開だ
投資家の心理状態が右往左往しているのだ
ちなみに、+1300円だと、22184円が目標になる。



6月8日に書いたように、ドル円が105円で踏ん張ることが条件だ。
今日までのところは、まだOKだ


今後の注目ポイントは昨日のブログに書いた通り
1:米中貿易戦争の影響で業績下方修正が、株式市場が一旦織り込んだ(5月末時点で)懸念レベルを上回る悪い数字になるのか?
2:日本株の投資家に関してだが、2019年はダメでも2020年以降は回復するのだから、将来を信じて株を買おう!という積極的な姿勢が、2019年の下半期(7月以降)に持続して、株価を押し上げる買い圧力になるのか?の2項目だ。

じっくりと観察しながら毎日を過ごしたいと思うが、今後に関して考えていることは、
「US株の買いポジ + 日経平均の売りポジ」というLong/Shortを試すことだ。
そういうチャンスが来るのかを考えながら観察を続けたい

2019年6月19日水曜日

2019年の日本株の業績下方修正懸念を跳ね返す力量と投資家の投資忍耐力

2019年の日本企業、日本株、投資家に関して下記の2項目を注意深く観察している

1:米中貿易戦争の影響で業績下方修正が、株式市場が一旦織り込んだ(5月末時点で)懸念レベルを上回る悪い数字になるのか?

2:日本株の投資家に関してだが、2019年はダメでも2020年以降は回復するのだから、将来を信じて株を買おう!という積極的な姿勢が、2019年の下半期(7月以降)に持続して、株価を押し上げる買い圧力になるのか?

6月18日の日本電産の発表では、4月、5月と自動車関連は悪化が続いており底打ち判断は
できないとのコメントがあった。
(URL=https://www.youtube.com/watch?v=kmda9n_rRZg&feature=youtu.be&fbclid=IwAR1ce0bOZGNnE50aiQbo6nBeT-_A980InRaQoM2fKPqiae_wEz_qi01kMN8 )

本日19日には中国向けの輸出の減少が財務省から発表された。
下記は日経新聞夕刊の記事
URL=https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190619&ng=DGKKZO46286530Z10C19A6MM0000



上記のようなことは投資家は既に予想しており、該当する企業の株価は既に下落している。

だから、今後の株価動向のポイントは、
1:織り込まれた以上に悪いのか?
2:織り込みほどは悪くないのか?(=Less Negativeなので株価は上昇する)
という部分になる。

さらには、織り込まれた以上に悪い場合でも、悪いのは今期(2019年度)だけで来期(2020年度)以降は数年間の回復になるので、今期の業績を無視して来期以降の予想業績で株を投資するのか、が見極めのポイントになる。

上記を占う最初のポイントは、4-6月決算時の経営者のコメントだ。
7月は本当に重要な月になるだろう。

2019年6月9日日曜日

自動車、住宅、雇用の三点セットで現状を把握する米国経済

米国景気の失速を懸念する声があるが、実態は過熱が収まった程度だろう。

米国経済は大いなる内需国家だ
自動車、住宅、雇用の三点セットで現状を把握するのが適している

自動車販売だが、好調が持続している
自動車販売の特徴は、先進国はどこでも同じだが「道路を走っている車の台数は変わらない」ということだ。

不景気なれば、ユーザーが買い替えサイクルを伸ばすので販売台数が減るが、景気が回復すれば徐々に元に戻り、正常レベルに達すれば販売台数ば横ばいになる。

現在は、正常レベルに戻った良い状態は4年以上も続いていることが理解できる



住宅販売は、2005年まで続いた未曽有の住宅バブルが、そのバブルを演出したサブプライム・ローン証券化商品バブルの崩壊とリーマンショックによって大幅に減少した。
現在は2010年以降のゆっくりとした持続的な回復過程にある。

新築と中古があるが、トレンドは似たようなものだが、規模は中古の方が約9倍も大きい。
足元は中古住宅販売が陰りを見せて黄色信号を発している。
新築住宅は好調と言える。



労働市場は、過去50年間で最良と言えるほどの労働者天国(=売り手市場)になっている。
ただ、2018年以降は「雇用のひっ迫のレベルはとんでもなく高い」がひっ迫感はピーク感が見え始めた、、と言えそうな状態になっている。

週間雇用統計(新規失業者、失業保険受給者数)の横這いになり、改善が見えなくなった。
月間雇用統計(非農業者雇用者増減)の5月分は、定期的に見られる低水準であったが、6月分、7月分が回復しなければ黄色信号点滅だろう。




米国景気の失速を懸念するよりも、外部経済への依存度が高い日中経済の方が心配だ
米中貿易戦争の景況が大きいのは、日中経済なのだから

2019年6月8日土曜日

一直線思考はパフォーマンスの足を引っ張る

上がると言われると、「今日からほぼ直線的に上がり続ける」と楽観視する人がいる。
下がると言われると、ずーっと下がり続けると恐怖してしまう人もいる。
そういう人の投資パフォーマンスは冴えないことが多い。

上昇相場に入ったとしても紆余曲折はあるし、結構な反落が来ることは多い、時には今の株価を下回る事だってある。
下落相場の場合でも、大底を打つ前に何度も結構な反騰相場が起こる

いわゆる中間反落、中間反騰を複数回こなしてから、その後に大天井や大底がやって来る。
さらに悩ましいのは、下落相場が上昇相場に転換する際の事だが、一番底、二番底と言うが、二番底が一番底よりも高いとは限らなず、二番底の方が安い場合もある。
こう書くと、「一番安いのが一番底であり、一番底と判断したのが間違い」と反論する人も多いだろうが、一番底というのは価格だけではない総合的なものだと理解すれば、「二番底の方が安い場合もある」という事が納得できるだろう。

紆余曲折を考えるのは中期的な判断に過ぎない。
そんな中期判断を無視してノンビリと全体相場(=10年単位)のリターンで満足するのも、それはそれで良い。
1982年夏に日中米のインデックスに均等額を投資して、その後何もせずに放置(日本のバブル崩壊でも放置し、リーマンショックでも対応せず)する長期判断だと、約+8%リターンなのだから、それで満足すれば十分かもしれない。

しかし、10-15%のリターンを目指すなら、
1:インデックスではなく個別株投資
2:インデックス投資なら中期的な対応
・・・が必要だ。

2の中期的な対応をするなら、相場の紆余曲折を理解する必要がある。
紆余曲折を理解するとは、一直線思考を卒業することだ。

2019年5月22日水曜日

負け組の受け皿

景気や株式市場の好調が長期間継続した結果、経済面での格差が拡大した

単純な数という側面では、負け組が増加し多数を占めるような状況を出現させた。
数は民主主義の意思決定要素として最も大きい

負け組の声を反映した政府が出現したり、既存の政府が負け組を考慮した政策にシフトしているのは、有権者の支持を必要とする民主主義政治の当然の反応だ

負け組の受け皿として勢力の伸ばして政権の座に就いた「負け組受け皿政府」は民主主義の世界ではルール決定権を得られた
しかし、日々の生活や企業活動を律している経済ルールの決定権は資本主義(=勝ち組)に牛耳られている

国内で完結した経済活動が可能であれば、資本主義ルールを反故にしたり無視したりして国を存続させることができるが、それが可能な国はどこにも存在しない。

換言すれば、
1:過去の海外からの借金を完全棒引きにして、国内だけで経済活動を回せば、有権者の生活レベルは大幅に劣化し、受け皿政権は瓦解する

2:有権者の希望する生活レベルを達成するには新たな資金が必要だが、国内での増税が不可能だから、(あ)海外から借金するか、(い)国債を発行するか、(う)紙幣の印刷を大規模に増やすか、という三択になる

受け皿政府が出現している国は経済運営面で問題を抱えており、国民が自国政府の国債を買う意欲が小さな国が多い。
その結果、(あ)か(う)になるのだが、(う)を選択すれば通貨の暴落で外貨(US$)が国内経済で使われる状況に追い込められる。

結局、(あ)海外から借金する、ことを選択せざるを得ない。
それは受け皿政府が資本主義ルール(=勝ち組ルール)に服従することを意味する。
そして、それは負け組政府を出現させた支持層の不満を増大させる。


負け組政府のジレンマを解決するには、国民が外国を上回る結果を出すように働く(=結果を出す労働)しかないのだと思う。

2019年5月13日月曜日

日経平均のPER変動の特徴_景気後退期

日経平均のPER変動の特徴:景気後退期

A:日経平均採用銘柄の多くは循環株であり、景気後退により利益(EPS)は急降下する

B:株価低迷の急落を懸念して、ルール通りには下方修正を発表しない(遅れ気味に発表する)企業が多い


基準に関しては、下図のようになっているhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%AD%E7%B8%BE%E4%BA%88%E6%83%B3%E3%81%AE%E4%BF%AE%E6%AD%A3


基準にある「増減があった場合」とは、企業が認識した時という意味なので、いつ認識したかは企業が決められる。だから・・・・
=上方修正は判明した時点で早々に発表
下方修正は決算発表時、もしくは直前(←決算を作っている過程で判明したという言い分)

・・・・という感じが多くなっている

C:証券会社のアナリストによる予想利益の
下方修正も株価が大幅に下がってから文章に残る形で発表することが多い

その背景は直前まで証券マンが顧客に買いを推奨しているので、売りを意味するような下方修正を記録に残る形式ではおいそれとは出せないという大人の事情があるからだ

上記A、B、Cの結果として、景気後退期には
1:集計データとして登録されているアナリストによる予想利益が、本来あるべき予想よりも大幅に過大のまま長期間放置される
2:株価は本来あるべき下方修正を織り込んで下落する
3:その結果、表示されるPERは本来あるべき数値よりも低く表示される

低くなったPERをみて、「買い!」だと勘違いして買ってしまう初心者が多くなってしまう。
まだまだ株価は下げ止まらないのだが・・・・・


薄紫四角枠内が典型例 (下図:青線=日経平均、橙線=予想収益ベースPER)


なお、濃紫枠内はPERが急上昇している
しかも2009~2010年の大半は、PERが無限大まで上昇している

この理由は、循環株の株価特性として・・・
収益が大幅に減少(赤字になっても)しても、株価は一定のレベルで下げ止まってしまう
・・・なので、
横ばいの株価 & 減少するEPS → PERだけが急騰
・・・という現象になるからだ

何故、株価が下げ止まるかに関しては、・・・・
投資家(特に、循環株投資家はベテランが多い)は、業績低迷の原因は景気サイクルによるものなので、一定期間後には景気の回復がくると考えて売りを辞め始めると同時に、一部の投資家は将来の景気回復・業績回復を想定して買いを入れ始め、その結果として売り買いがバランスしてしまうからだ

2019年5月11日土曜日

日経平均のPER変動の特徴_景気回復期

日経平均のPER変動の特徴

A:日経平均採用銘柄の多くは循環株であり、景気循環による利益(EPS)の上下動の幅が大きい
B:アナリストによる予想利益の修正作業が遅い

上記A,Bの結果として、景気改善期には
1:集計データとして登録されているアナリストによる予想利益が、本来あるべき予想よりも大幅に過小のまま放置される
2:株価は本来あるべき予想を織り込んで上昇する
3:その結果、表示されるPERは異常なほどに高くなる

紫枠内(A)が典型例


2019年5月4日土曜日

伸るか反るかその日の相場は重要

5月3日の米国株は重要な日だった。



上図にあるように、1日、2日と嫌な下げ方をしており、4月26日に書いたブログ記事「10連休を前にしての相場観察」に書いた「伸るか反るか」のポイント(下図の赤枠部分)に移行するか否かの判定日だったからだ


結果は、下図にあるように、下がった時に買ったポジションが短期間で利益をもたらす好循環という相場になった。
つまり(1)の状態が維持される結果になった。



年初来の上昇率は相当なもの(下左図参照)だが、こういう好循環の相場環境の時には上へのオーバーシュートはつきものだ。
かといって今のペースをそのまま延長した年間リターン(下右図)になる可能性は低い



伸るか反るかの日(5月3日)は月間雇用統計の発表の日だった。
失業率は、3.6%という50年ぶりの低さ、月間の非農業者雇用増減は、+263000人の増加、という好調な雇用市場を反映する内容だった。

しかし、好調経済=利上げ懸念=金利上昇、とはならず、10年金利は下図のように低下した



好調な経済+金利の低下=株にfavor、、という事で株価は大幅に上昇したのだ
金利低下の理由にされたのは、時間給の上昇幅(前年比+3.2%)が予想(+3.3%)よりも小さかったという部分だった



なお、10年金利で言えば、2.75%を上回る(下図の赤枠部分のように)までは、株式市場の悪材料にはならないだろう



3%を上回る賃金上昇など労働者にとっては好調な労働市場が続いていることを受けて、消費マインドも絶好調が続いており、実際の小売り統計も絶好調が続いている

日本、中国、US、、三か国のなかでマクロ経済、企業業績、株価の三拍子が揃って好調を維持しているのが、現在のUSである。

目次: 日経平均株価を決めているもの

1:日経平均のPERの変化、その背景(1)予想利益の前年比
2:利益が10%増えれば、日経平均も10%上がる
3:ドル円為替相場と日経平均の予想利益、どの程度連動するのか?
4:日経平均株価 VS ドル円為替相場
5:日経平均のPERの変化、その背景(2)ドル円為替相場に対する一喜一憂
6:「ドル円為替相場の短期変動 VS 予想利益の前年比の上下動」 & まとめ
7:2017年以降の日経平均の状態

2019年4月29日月曜日

2017年以降の日経平均の状態

2017年以降の日経平均には、それ以前とは異なった不思議な均衡状態が成立している
スライドで確認してみたい

(1)株価は比較的堅調に推移している、約4000円の上昇を示している


(2)株価の堅調さは、予想利益の伸びが大きく、PER低下のネガティブ・インパクトを相殺して余りあることが理由だ。
予想利益は+40%、PER低下は▼20%という程度だ



(3)ドル円為替相場は安定的に推移しており、予想EPSに悪影響を与えなかった。
ドル円為替相場の安定にも関わらず、PERが低下してしまった



(4)ドル円為替相場の安定にも関わらず、予想EPSの前年比が低下している


(5)PER低下の犯人は、予想EPSの前年比の低下だと思われる


そういう状況を踏まえれば、今後もポイントは下図のようになる。


「ドル円為替相場の短期変動 VS 予想利益の前年比の上下動」 & まとめ

ドル円為替相場の変動予想利益の前年比の上下動の関係を観てみよう

経済の復活を目指したアベノミクスの三本の矢の一つ日銀の異次元緩和であり、その目的が異常なドル安円高の是正にあったことは明らか有り、ドル高円安が経済を復活させる最大のファクターだと認識された。

2012年以降の予想利益の前年比の上下動は、ドル円為替相場の上下動と相関度が高い。
特に、グイッとドル高円安が進むと予想利益の前年比が急上昇(=未来を明るく見る度合いが急上昇)している。



ドル円為替相場の変動未来予想の明暗に影響を与えていることは確かだ。

一方、短期的な未来予想の上下動はあっても、予想利益は淡々と増加基調であったことも確かな事実だ。

これまで書いてきたことを整理すると、下図のようなことが見えてくる

日経平均の動向は、・・・・
(1)短期の株価の変動率は大きい、とても先進国のPER変動とは思われないほどだ
(2)長期的には予想利益は淡々としたペースで上昇しており、それに比例した株価上昇になっている
・・・・という事実だ。

ただ、2017年以降を見れば、安定的なドル円為替相場にも関わらず、予想利益の前年比が低下している。
これをどう評価するかが今後の株価の予想の分かれ目になる。
1:もうすぐドル安円高が来ることを織り込んでいるのか?
2:米中貿易戦争の長期化による悪影響を経営者が大きく懸念しているのか?
3:トランプ大統領が日本に突き付ける対米黒字縮小策が日本経済にとって厳しいものになることをPERが織り込んでいるのか?
4:すべては心配し過ぎで、今は絶好の買い場であるのか?

いずれ時間が経過すれば答えは投資家の前に示されるのだが、それを事前に知ることができる魔法の水晶玉は誰も持っていない。

日経平均のPERの変化、その背景(2)ドル円為替相場に対する一喜一憂

前回の続きだ

日経平均のPERの変動幅は大きい。
短期間で3倍程度(15倍←→18倍)は動いている


3倍の変化は、株価という観点からは大きな上下動の要素になる
下の4月24日の状態「PER=16倍、株価22200円」という水準を起点に計算すれば、



PER=15倍なら、22200 X 15/16 = 20813円
PER=18倍なら、22200 X 18/16 = 24975円
というように、4000円も株価を変動させることになる

PERを変動させる原因としては、ドル円為替相場は、予想利益の前年比と並んで大きいファクターなのだ。

下図を見れば、ドル円相場の変動がPERを大幅に上下動させていることがわかる
その結果、日経平均株価は短期で結構な上下動をしてしまうことになる。


1971年8月15日のニクソンショック(金とドルの固定レートでの交換終了=変動相場へ)で金本位制(1ドル=360円の固定為替制度)が完全に終焉を迎え、その後の長期的なドル安円高を経験した日本人の体内には「為替=ドル安円高」という条件反射的な思考回路が出来てしまったように思う。

360円から80円へのドル安円高の過程で、日本の輸出企業そして日本経済は塗炭の苦しみを経験した。
だから、ちょっとでもドルが弱くなると、経営者も投資家も過剰に反応するようになってしまったのだろう。

日経平均株価 VS ドル円為替相場

前回ブログで、ドル円相場と予想利益ドル円の大幅な上下動でない限り気にしなくて良いと書いた

では、日経平均の株価はどうだろう?
下図の「ドル円為替相場と日経平均」の推移をみると、日経平均はドル円で決まるように見えてしまう



今回も、目盛の操作という影響を排除するために、両者を指数化して対数目盛で表示したのが下図だ。



これを見れば、ドル円為替相場が日経平均の水準を決めるとは言えず、むしろ「4月28日のブログ:利益が10%増えれば、日経平均も10%上がる」に書いたように、予想利益の水準の方が日経平均の水準を決めるファクターとしては大きいことがわかる。

では、何故ドル円の上下動をことさらに強調する投資家や評論家が多いのだろうか
次回に続く

ドル円為替相場と日経平均の予想利益、どの程度連動するのか?

民主党政権時代のドル安円高&デフレ期を経て、アベノミクスによるドル高円安で日本経済が復活し、それによって企業利益が増加して日経平均も8000円から2万4000円という三倍高を演じだ。

それゆえ、ドル円為替相場の方向が日経平均の利益を左右すると信じている投資家が多い

しかし、過去データを慎重に観察すると、
(1)円高デフレ期だが、円高に比例して予想利益は減ってはおらず、それなりに増加している
(2)黒田日銀総裁による異次元緩和バズーカによる急速なドル高円安期のは、予想利益が急増したような一般認識とは裏腹に、円高デフレ期のペースとあまり変わらない角度で予想利益は淡々と増加している。
(3)その後の浜田&黒田両氏によるか過度の円安けん制発言後は、予想利益が低下しているが、
(4)2017年以降のドル円の安定期(105~115円のボックス)は、急速円安期と同様なペースで予想利益が増加している。



ドル円為替相場と予想利益の関係を正確に観察するために、両者を指数化して目盛を対数目盛にしたのが下図だ

これを見れば、ドル円為替相場の動きは短期的には予想利益に影響を与えるが、長期的には予想利益は淡々と増加していることがわかる。
5~10円程度の上下動に一喜一憂する必要は長期的には無いと思われる

2017年以降のドル円為替相場の安定期における予想利益の持続的な増加は素晴らしい




2019年4月28日日曜日

利益が10%増えれば、日経平均も10%上がる

日経平均における利益と株価の関係だが、半年から1年程度の上下へのオーバーシュートはあっても、結局は利益の増減に比例して日経平均は動いている

正確に言えば、予想利益の増減に比例している。
株価は予想利益によって形成されるから、利益も実績ではなく予想を使うのが妥当だ。

この関係は現在の相場が始まった2009年1月以降の分析であり、前回相場(1982年~2008年)は異なるかもしれないが、現在の投資家にとっては現在相場の分析が適切だろう。

下図は、予想利益の推移と日経平均の推移だ。
長期的には利益に沿って株価が動いている。
そうであると考えるのが常識的だし、実際にその通りなのだ。



上図だけだと目盛を都合の良いように操作して、騙すことも可能なので、起点を100として指数化したのが下図だ。



民主党政権時代の円高デフレ期は通算すれば、株価も利益も横ばいだったことが分かる。
その後のアベノミクスの開始以降は利益の増加に比例して株価が上昇してきた。

短期的には、株価の方が先に動く性格がある。
株価の先行性と呼ばれているが、経営者が予想利益の上方修正/下方修正する前に、投資家は様々なニュースやデータによって「多分利益は上方修正/下方修正」されそうだと推測して先に売買行動を行うからだ。

株価は半歩先に行って、本当にそうなるかを観察している、と春山は解釈している。
半歩先だから、予想が現実化したときには確認の上昇/下落が発生する、と同時に投資家は瞬時にさらに半歩先に行く
それを永遠に繰り返しているのが株式市場だと思う。

足元は、2018年1-3月頃から利益の増加ペースが鈍化している。
米中貿易戦争などが背景にあるのかもしれないが、鈍化を危惧して株価は下方に乖離している。

株価の先行性を強調する投資家は、今後の利益減少を予想する。
株価の下がり過ぎを強調する投資家は、利益水準にむかっての株価の上昇を予想する。
どうなるか? 
水晶玉を持っている投資家はいないのだ。

日経平均のPERの変化、その背景(1)予想利益の前年比

株価は予想利益の何倍まで評価するか(=PER)で決まる
PERは何に反応して上下動しているか

経営者の考える将来が、明るいか?暗いか?に反応して上下動している

それは当然だが、それを何で知ることができるのだろう?
企業経営者が今年の業績を予想して発表する
それがどう変化しているか(例:前年との比較)を知れば良いだろう。

それは誰でも無料で知ることができる
日経平均プロフィルのアーカイブ(https://indexes.nikkei.co.jp/nkave/archives/data?list=per
そこに記載された数値をエクセルに入れて加工してグラフ化したのが下チャートだ



オレンジ色の線(予想EPS前年比)を見れば、2018年初頭から、経営者は将来利益の見通しに慎重になり、その慎重さは度を増している。
それに呼応して日経平均のPER(青線)は下落してきた。

今後のPERの動向は、経営者が考える未来を決算説明会で聴いて判断することが重要だろう。