2019年4月29日月曜日

2017年以降の日経平均の状態

2017年以降の日経平均には、それ以前とは異なった不思議な均衡状態が成立している
スライドで確認してみたい

(1)株価は比較的堅調に推移している、約4000円の上昇を示している


(2)株価の堅調さは、予想利益の伸びが大きく、PER低下のネガティブ・インパクトを相殺して余りあることが理由だ。
予想利益は+40%、PER低下は▼20%という程度だ



(3)ドル円為替相場は安定的に推移しており、予想EPSに悪影響を与えなかった。
ドル円為替相場の安定にも関わらず、PERが低下してしまった



(4)ドル円為替相場の安定にも関わらず、予想EPSの前年比が低下している


(5)PER低下の犯人は、予想EPSの前年比の低下だと思われる


そういう状況を踏まえれば、今後もポイントは下図のようになる。


「ドル円為替相場の短期変動 VS 予想利益の前年比の上下動」 & まとめ

ドル円為替相場の変動予想利益の前年比の上下動の関係を観てみよう

経済の復活を目指したアベノミクスの三本の矢の一つ日銀の異次元緩和であり、その目的が異常なドル安円高の是正にあったことは明らか有り、ドル高円安が経済を復活させる最大のファクターだと認識された。

2012年以降の予想利益の前年比の上下動は、ドル円為替相場の上下動と相関度が高い。
特に、グイッとドル高円安が進むと予想利益の前年比が急上昇(=未来を明るく見る度合いが急上昇)している。



ドル円為替相場の変動未来予想の明暗に影響を与えていることは確かだ。

一方、短期的な未来予想の上下動はあっても、予想利益は淡々と増加基調であったことも確かな事実だ。

これまで書いてきたことを整理すると、下図のようなことが見えてくる

日経平均の動向は、・・・・
(1)短期の株価の変動率は大きい、とても先進国のPER変動とは思われないほどだ
(2)長期的には予想利益は淡々としたペースで上昇しており、それに比例した株価上昇になっている
・・・・という事実だ。

ただ、2017年以降を見れば、安定的なドル円為替相場にも関わらず、予想利益の前年比が低下している。
これをどう評価するかが今後の株価の予想の分かれ目になる。
1:もうすぐドル安円高が来ることを織り込んでいるのか?
2:米中貿易戦争の長期化による悪影響を経営者が大きく懸念しているのか?
3:トランプ大統領が日本に突き付ける対米黒字縮小策が日本経済にとって厳しいものになることをPERが織り込んでいるのか?
4:すべては心配し過ぎで、今は絶好の買い場であるのか?

いずれ時間が経過すれば答えは投資家の前に示されるのだが、それを事前に知ることができる魔法の水晶玉は誰も持っていない。

日経平均のPERの変化、その背景(2)ドル円為替相場に対する一喜一憂

前回の続きだ

日経平均のPERの変動幅は大きい。
短期間で3倍程度(15倍←→18倍)は動いている


3倍の変化は、株価という観点からは大きな上下動の要素になる
下の4月24日の状態「PER=16倍、株価22200円」という水準を起点に計算すれば、



PER=15倍なら、22200 X 15/16 = 20813円
PER=18倍なら、22200 X 18/16 = 24975円
というように、4000円も株価を変動させることになる

PERを変動させる原因としては、ドル円為替相場は、予想利益の前年比と並んで大きいファクターなのだ。

下図を見れば、ドル円相場の変動がPERを大幅に上下動させていることがわかる
その結果、日経平均株価は短期で結構な上下動をしてしまうことになる。


1971年8月15日のニクソンショック(金とドルの固定レートでの交換終了=変動相場へ)で金本位制(1ドル=360円の固定為替制度)が完全に終焉を迎え、その後の長期的なドル安円高を経験した日本人の体内には「為替=ドル安円高」という条件反射的な思考回路が出来てしまったように思う。

360円から80円へのドル安円高の過程で、日本の輸出企業そして日本経済は塗炭の苦しみを経験した。
だから、ちょっとでもドルが弱くなると、経営者も投資家も過剰に反応するようになってしまったのだろう。

日経平均株価 VS ドル円為替相場

前回ブログで、ドル円相場と予想利益ドル円の大幅な上下動でない限り気にしなくて良いと書いた

では、日経平均の株価はどうだろう?
下図の「ドル円為替相場と日経平均」の推移をみると、日経平均はドル円で決まるように見えてしまう



今回も、目盛の操作という影響を排除するために、両者を指数化して対数目盛で表示したのが下図だ。



これを見れば、ドル円為替相場が日経平均の水準を決めるとは言えず、むしろ「4月28日のブログ:利益が10%増えれば、日経平均も10%上がる」に書いたように、予想利益の水準の方が日経平均の水準を決めるファクターとしては大きいことがわかる。

では、何故ドル円の上下動をことさらに強調する投資家や評論家が多いのだろうか
次回に続く

ドル円為替相場と日経平均の予想利益、どの程度連動するのか?

民主党政権時代のドル安円高&デフレ期を経て、アベノミクスによるドル高円安で日本経済が復活し、それによって企業利益が増加して日経平均も8000円から2万4000円という三倍高を演じだ。

それゆえ、ドル円為替相場の方向が日経平均の利益を左右すると信じている投資家が多い

しかし、過去データを慎重に観察すると、
(1)円高デフレ期だが、円高に比例して予想利益は減ってはおらず、それなりに増加している
(2)黒田日銀総裁による異次元緩和バズーカによる急速なドル高円安期のは、予想利益が急増したような一般認識とは裏腹に、円高デフレ期のペースとあまり変わらない角度で予想利益は淡々と増加している。
(3)その後の浜田&黒田両氏によるか過度の円安けん制発言後は、予想利益が低下しているが、
(4)2017年以降のドル円の安定期(105~115円のボックス)は、急速円安期と同様なペースで予想利益が増加している。



ドル円為替相場と予想利益の関係を正確に観察するために、両者を指数化して目盛を対数目盛にしたのが下図だ

これを見れば、ドル円為替相場の動きは短期的には予想利益に影響を与えるが、長期的には予想利益は淡々と増加していることがわかる。
5~10円程度の上下動に一喜一憂する必要は長期的には無いと思われる

2017年以降のドル円為替相場の安定期における予想利益の持続的な増加は素晴らしい




2019年4月28日日曜日

利益が10%増えれば、日経平均も10%上がる

日経平均における利益と株価の関係だが、半年から1年程度の上下へのオーバーシュートはあっても、結局は利益の増減に比例して日経平均は動いている

正確に言えば、予想利益の増減に比例している。
株価は予想利益によって形成されるから、利益も実績ではなく予想を使うのが妥当だ。

この関係は現在の相場が始まった2009年1月以降の分析であり、前回相場(1982年~2008年)は異なるかもしれないが、現在の投資家にとっては現在相場の分析が適切だろう。

下図は、予想利益の推移と日経平均の推移だ。
長期的には利益に沿って株価が動いている。
そうであると考えるのが常識的だし、実際にその通りなのだ。



上図だけだと目盛を都合の良いように操作して、騙すことも可能なので、起点を100として指数化したのが下図だ。



民主党政権時代の円高デフレ期は通算すれば、株価も利益も横ばいだったことが分かる。
その後のアベノミクスの開始以降は利益の増加に比例して株価が上昇してきた。

短期的には、株価の方が先に動く性格がある。
株価の先行性と呼ばれているが、経営者が予想利益の上方修正/下方修正する前に、投資家は様々なニュースやデータによって「多分利益は上方修正/下方修正」されそうだと推測して先に売買行動を行うからだ。

株価は半歩先に行って、本当にそうなるかを観察している、と春山は解釈している。
半歩先だから、予想が現実化したときには確認の上昇/下落が発生する、と同時に投資家は瞬時にさらに半歩先に行く
それを永遠に繰り返しているのが株式市場だと思う。

足元は、2018年1-3月頃から利益の増加ペースが鈍化している。
米中貿易戦争などが背景にあるのかもしれないが、鈍化を危惧して株価は下方に乖離している。

株価の先行性を強調する投資家は、今後の利益減少を予想する。
株価の下がり過ぎを強調する投資家は、利益水準にむかっての株価の上昇を予想する。
どうなるか? 
水晶玉を持っている投資家はいないのだ。

日経平均のPERの変化、その背景(1)予想利益の前年比

株価は予想利益の何倍まで評価するか(=PER)で決まる
PERは何に反応して上下動しているか

経営者の考える将来が、明るいか?暗いか?に反応して上下動している

それは当然だが、それを何で知ることができるのだろう?
企業経営者が今年の業績を予想して発表する
それがどう変化しているか(例:前年との比較)を知れば良いだろう。

それは誰でも無料で知ることができる
日経平均プロフィルのアーカイブ(https://indexes.nikkei.co.jp/nkave/archives/data?list=per
そこに記載された数値をエクセルに入れて加工してグラフ化したのが下チャートだ



オレンジ色の線(予想EPS前年比)を見れば、2018年初頭から、経営者は将来利益の見通しに慎重になり、その慎重さは度を増している。
それに呼応して日経平均のPER(青線)は下落してきた。

今後のPERの動向は、経営者が考える未来を決算説明会で聴いて判断することが重要だろう。

2019年4月26日金曜日

10連休を前にしての相場観察

上昇中の市場が数週間を超える調整フェイズに入るには、「下がったら買い」の戦略が失敗する局面が起こらなければならない

(1)下がっても、そこで買ったポジションが短期間で利益ももたらす好循環では、下がったら買う投資家が多く存在するので、朝は下がっても後場には買いが優勢になって「下髭の長いローソク足」となる
それを見て翌日には「長い下髭=買うべし」という買いのフォロワーが増える。
こういうプロセスで上昇トレンドが継続する。

(2)しかし、何かをキッカケに、その「下がったら買う」という条件反射的な(=パブロフの犬的な)投資行動が失敗する時が来る。
長い下髭にならない、翌日の続落でナンピンしても次の日の上がらずに含み損が膨らむ。そうなって始めて、「あれ、変だな?」と投資家は感じ始める。

この時点で「伸るか反るかの分水嶺(a)か?(b)か?」が来る。
(a)そこで相場が踏みとどまり、「あー、あそこで売らないで良かった」という反転上昇がくる。確率はあまり多くない、と思う。

(b)そこからさらに下がってしまい、買いポジションが大きな含み損となり、徐々に損切を始める投資家が出始める。しかも、このフェイズでもナンピンして反転上昇に期待する投資家がいるので数日程度は戻り局面になることもあるが、高値を切り下げながら「大勢下げ局面」に転じていく。これが、数週間を超える調整フェイズに入る典型的なパターンだ。



現在は、まだ(1)の局面に留まっている、と観察できる。
次の市場は5月7日だ。米中の外部要因が色々と起こるだろうが、水晶玉を持っていない春山には将来が見えない。
さて、どうなるだろう????

関連過去記事:下げ局面での買い出動の三分類(ファンクラブ、モリモリ、スマート)

2019年4月13日土曜日

お金を増やすこと VS 使うお金を増やすこと

量的緩和、QE、異次元緩和、、、これらすべては金融の緩和
つまり、お金の量を増やすことだ。

お金の量が増えれば、株や不動産といった資産価格が上昇する
しかし、経済が本格的に好転するには緩和だけでは力不足

経済の本格好転には、増えたお金を民間が有効活用して景気を持続的に拡大復活させるという民間部門の積極的なリスク・テイク行動が必要だ

お金を使う人が増えて、物やサービスの購入量が増加し、それに伴って人の雇用の増加、物の仕入れ量の増加、金を借りる量の増加が持続的に続いて、経済が拡大基調になるというプロセスが起こって欲しいのだ

「お金を増やすこと」と「使うお金を増やすこと」は別次元の話だ。

21世紀の景気回復政策(ITバブル崩壊後、金融不動産資源エネルギー・バブル崩壊後)においては、「お金を増やしてもインフレにならないなら、増やし続けてもOK」という論調が多数派になってきた。

現在では下記記事に掲載されているように、「政府が使うお金を増やしてもインフレにならないなら、増やし続けてもOK」という論調が増えつつある。

お金を増やしても民間がお金を使わないなら、政府が使おう!、、、という論(新MMT)だ。
参考:Modern Monetary Theory

量的緩和、QE、異次元緩和においては、民間が保有する金融資産を中央銀行が買い上げてお金を増やしている。もう少し言えば、政府が発行する国債を、民間に買ってもらって(=ワンクッション置いて)その後に国債を中央銀行が買っている状態だ。

MMTでは、もっと国債を発行して、政府の財政出動の規模を増加させることになる。



これまでは、国債発行の多くの部分が国家予算の固定費(医療、福祉、過去に発行した国債の借り換え)に使われるので、景気浮揚政策に使える部分が少ない。

MMT理論が主流になれば、現状の国債発行を+30~50%増加させて得られた資金を「金を使う政府支出=真水の景気対策」に使えることになる。

お金を増やしても民間がお金を使わないなら、インフレは起こらない。

タンスに眠る(=銀行預金に眠る)お金はモノに向かわないからだ

しかし、政府が民間に代わって、どんどんお金を使いだせば、モノやサービスにお金が流れ込むことになる
景気とインフレにインパクトが出るだろう。

民間が使おうが、政府が使おうが、お金に色はない
以前の中国で、公的部門が贈答賄賂で大量の物(高級品)やサービス(レストラン等)にお金を使っていて、景気が良かったというのと同じだ

日本だと、老朽化したインフラを一気に更新整備して、次の100年間の資産として活用するなどは有効な使途だろう

ポイントは、インフレが起こり始めたら、政府の支出を低下させるルールを誰が強制するか、ということだ。
有権者は使い続けて欲しいと言うだろう。
政府のお買い物で潤っている(=政府に依存する)ビジネスからは、「まだインフレではない、足元のインフレは善だ」という論調が出てくるだろう。
民主主義の有権者は古今東西そういう「困ることから目をそらす性癖をもつ人間」であったことは歴史(特に1950年代以降)を振り返れば明らかである