2016年5月5日木曜日

インフレと低金利_7 : 景気サイクル要因


(1)グローバル調達はリスク・テイクと表裏一体

外国企業の製造拠点が新興国に進出するためには、新興国内電気、ガス、水道、空港、港湾、道路、教育(英語が話せる労働者、文字が読める労働者が必要)などの多岐にわたる分野への巨額投資(=いわゆるインフラ投資)が実施される必要がある。


しかし、新興国政府には、上記のような大規模インフラを整備するための資金が無い

その資金は先進国から「新興国投資」という形で、新興国へと流入する

新興国政府の発行する国債への投資、新興国の政府や企業への貸付、新興国企業へ株式投資、様々な形式で、先進国の余剰資金が高いリターンを求める「リスク・マネー」として新興国へ流れ込むのだ。

この資金の流れは、上図に示したように経済発展段階に付随する資金需給の構造的な変化(=先進国の資金余剰&新興国の資金不足)から見れば、正常な資金の流れである。

グローバル調達(=
製造拠点の新興国シフト)は、新興国へのリスク・マネーの流入があるから正常に機能する。


(2)リスク・テイクが後退するとグローバル調達もとん挫
リスク・マネーの大部分は民間の資金だ。
政府の資金は損得を度外視できるが、民間資金は損得に敏感だ。
何かの変調が見えれば、あっという間に逃げ出してしまう。

新興国・資源エネルギー・重厚長大産業といったバブルが崩壊した後に露呈したのは、「過剰な生産設備、過剰な借金」という問題だ。

バブル期に急増した生産設備をフル稼働させられるような需要は消えてしまった。
新興国には職に就けなくなった労働者返す当てのない借金が残された。



逃げ出したリスク・マネーは、先進国内の債券市場に流れ込んで、その中をぐるぐる回っている。
そもそも資金余剰体質の先進国では、ますます資金がだぶついて、金利低下が進む。

そんな低金利では儲けなど無いに等しいのだが、「損をするよりも、よっぽどマシだ」というリスク回避の態度を変えようとしない。

日本や欧州ではマイナス金利が導入されたのだが、それでもリスクにおびえる資金は債券市場に留まり続けている。

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