2016年5月4日水曜日

インフレと低金利_2 : 「人」の需要は?

(1)インフレは消えたのか
物であれサービスであれ、欲しいと思う人が増えれば価格は上がり、減れば下がる。
また提供される人・物・金の数が増えれば価格は下がり、減れば上昇する。
この需給の経済原則は今でも生きている
では、人・物・金に関する需給の現状をチェックしてみよう。

(2)消費は二極化、全体が盛り上がらない
現在の日本は好調な小売業が多い一方、メディアでは個人消費は冴えないと報道される。


上図に示したように、景気好転+賃金上昇+資産効果の恩恵で消費をエンジョイするグループと、賃金増加分のほとんどを貯蓄に回して消費を増やさないグループに分かれて、二極化の様相を呈している。

2009年以降の世界的な景気回復による株式の上昇や、アベノミクス以降の日本の不動産価格の上昇の恩恵に浴するグループは消費を増やしているが、その恩恵に浴さないグループは将来不安におびえて消費を増やさないままだ。

(3)私の賃金は上がらない
景気は回復しているのに、私の賃金は上がっていない・・・メディアが良く使うフレーズだが、真実を統計でチェックしてみよう。


上図に示されたように、
1:雇用者の人数は2007年から増加している。(破線)
2:一人当たり賃金は横這い(太線)
3:雇用者数×賃金=国内で支払われる賃金総量は増えている(薄い実線)

つまり、
1.小売業などは、日本全体で増えた「支払われた賃金」から恩恵を得ている。
2.平均賃金は横ばいなので、「私の賃金は増えていない」と不満を感じる
そういう構造が現在の日本だ。

また下図(働く人数×労働時間)を見れば明らかなように、国内の労働の総量は新高値を超えてきた。つまり景気は悪くはないのだ。



なお、正規雇用者の70%以下の賃金水準といわれる非正規労働者の賃金は伸び続けている


景気の回復で雇用を増やしたいが、景気の持続性にまだ自信がないので、従業員を増やすに際しては、解雇の不自由を避けつつ、雇用コストを抑えつつ、増やしたい、そう思う経営者は非正規の賃金を多少アップさせてでも非正規を確保している構図が理解できる。

また、同じ成果を出せるなら、雇用コストが70%以下の非正規を採用するのは経済的に合理性がある。

現在、安倍政権は「同一職種同一賃金」という政策を推進している。

今後その動きが強まり、欧州並みの「非正規=正規の80%」というレベルに非正規賃金が上昇すれば、今度は、会社に対する帰属意識、責任感という定性的なファクターを重視する動きが強まって、正規賃金の上昇につながる可能性がある。

facebookコメントヘ