2016年8月1日月曜日

中国の民主化 (8) 悩める民主主義

1:問題解決能力を喪失した民主主義
中国に対して民主化を要求する欧米諸国だが、皮肉なことに民主主義の劣化が顕在化している

民主主義は相互譲歩を有権者である市民に要求する制度だ。
意見の異なる相手に対して自己の主張を絶対視し相手に譲歩しないなら民主主義は成立しない。民主主義は多種多様な主張を相互に調整妥協しながら合意点を見つけるシステムであり、
絶対という概念は民主主義とは相いれない

時代の変化に応じて諸制度の改善や変更を必要としている時であるにも関わらず、
1:暴力による変更を封じられ(禁止され)
2:かつ抵抗勢力が「説得による制度変更」に頑として応じないならば
その社会は劣化するしかない。

現代民主主義国家が陥っている妥協なき主張の応酬は、民主主義社会の劣化を示唆している。民主主義が問題解決能力を喪失してしまえば、別の制度にとってかわられるだろう。
 


21世紀になって、民主主義になれば良いことがあると期待して独裁政権を倒して民主化したものの、とん挫するケースが目立ち始めている。

独裁政権を倒してみたものの秩序の崩壊と経済の混乱が長期化して独裁政権時代よりも貧困化してしまい、しかも同胞同士が殺しあう泥沼の内戦が長期化しているアフリカはその代表例だ。
2010年の一瞬のアフリカ春の夢の後、あっと言う間に民主化の夢は破れ、現在は中東アフリカ100年戦争とでも言うような状況に陥ってしまった。

民主主義を勝ち取るには歴史的には長い時間と多くの血が流れた。
そうやって勝ち取った民主主義だから、民主主義を維持する努力も必要である。勝ち取ったからと言って、自然に維持されるものではない。

民主主義は、参加主義、多数の市民の政治参加(例:投票という政治的な権利の行使、もしくは恣意活動としてのデモ)を要求する制度だ。政治への参加率が減れば、政権担当者の政策に民意が正しく反映されず民主主義に対する信頼が低下する。

2:新制度は新勢力が勝ち取ってきた
英国の名誉革命当時、工業化商業化による恩恵を受けて勃興してきた新勢力は高額納税者だった。彼らが王権による独裁主義を廃し、自分たち(=新勢力)に都合のよい制度である代表制民主主義を勝ち取った。

現代において、民主主義が問題解決能力を喪失したままの状態が長期化し、現在とは異なる新勢力が台頭して彼らが政治的に「まとまった勢力」として動員されれば、新勢力に都合のよい「**主義化」が起こる可能性がある。
それが何なのかは予想ができないが新勢力が利益を得る政治制度だろう。そして、それは現在の民主主義とは異なる別の制度であろうと思われる。