2016年8月8日月曜日

中国とイスラム過激派:キッシンジャーの遺言

キッシンジャーの国際秩序を読んで考えた。
この本は、彼の遺書だと思いながら読んでいる。


統治のために宗教を利用することは、古今東西の歴史が示してきた。
キリスト教はローマ帝国が採用し、欧州の中世時代では「教皇権力が王権に勝る」状態に達し、キリスト教がカトリックとプロテスタントに分裂して以降は、国家も両派に分かれて戦う状況になった。

商業と工業が進歩するにしたがって生まれた富裕な新興勢力が増加するにつれて、宗教を「個人の心の中の世界に封じ込めた」世俗政権が支配的になった。
この状況に到達するまでには、おびただしい血が流れた。

今日の民主主義陣営にとっては、中国とイスラム諸国が脅威となっている。

中国は共産党の一党独裁は民主主義よりも優れていると主張して譲らない。
搾取を基本とする「資本主義+民主主義」よりも「『社会主義市場経済+中国共産党の一党独裁』の方が、人民を幸福にするという点で民主的である」とも主張している。

イスラム主義は民主主義と握手できるだろうか?
過激派は、イスラム教によって世界が統一されるゴールを目指すうえで、世俗国家は消滅させるべき対象であり、神以外の人民が法律を作成する民主主義も撲滅すべきもの、と宣言している。

イスラム国家は、過激派の主張を正面から否定できない弱みを持っており、サウジやイランは彼らに直接間接で資金援助(コントロールする意図で)もしている。

また、中東アフリカのイスラム諸国の多くは独裁政権であり、紛争解決に名を借りた民主主義の押し付けは、自分たちの特権を放棄させられると認識しており、援助は受けるが民主化には反対する姿勢を維持している。

世界経済が中国経済に依存する限り、中国共産党の勢力は強いままだろう。
原油価格が高い限り、イスラム過激派は武器を資金を得られ続けるだろう。



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