*** 2016年を考える_11 ***
第五部:日本株式の投資環境_2:増えない輸出
(1)円安で金額増えたが、数量が増えない輸出
日本株の懸念の一つは、大型輸出企業の利益の伸びの鈍化が辛いことだ。
3・11の地震以降、日本企業の輸出数量が横ばいを余儀なくされている。(下図左側参照)
その原因に関しては、
1:アジア勢の追い上げで輸出競争力を失いつつあるとか、
2:巨大地震が起こる日本からの輸入はサプライ・チェーンに支障をきたすリスクがあるので、一定割合を日本以外からの調達に切り替えたから、等と言われている。
為替に関して考えると・・・・
2011年3.11の震災以降、原発が停止したことから、価格が高止まりしていた原油や天然ガスを大量に輸入することになり、貿易収支が急速に悪化した。
2011年末までは、民主党政権の円高デフレ政策によりドル円は無反応だったが、貿易収支の急速な悪化を反映して極端な円高が修正され始めた。
2012年11月以降はアベノミクスの円安政策を織り込む形で、急速な円安が進展した。
2015年に入ってからは、前年10月以降に急落が始まった原油価格を受けて、貿易収支の改善が始まり、5月には安倍首相の経済ブレーンの浜田氏と黒田日銀総裁の両氏から過度の円安を牽制する発言が出て、8月からは円安が止まった形になっている。
現状は、・・・・
1:原油価格は低位で推移し、貿易収支の赤字は消え、
2:外人観光客の急増や対外投資の収益の増加も相まって、日本の対外収支は「外貨の受け取りが増加」する局面
・・・になっている。
2:外人観光客の急増や対外投資の収益の増加も相まって、日本の対外収支は「外貨の受け取りが増加」する局面
・・・になっている。
(2)2016年は円安効果が消える
2016年に関しては、
1:イランの原油の増産による価格下落圧力はあるものの、米国のシェールによる価格低下圧力はピークアウトしており、原油価格はボックス圏で上下動すると思われる。
長期的には、過去に原油価格が急落した1985年の後の価格動向(下図赤枠内)と似たような動きを想定している。
2:貿易収支に関しては、原油やガス価格の急騰がない限り、赤字の拡大は無いだろうし、一方徐々に増えてくる原発の再稼働もエネルギー要因の貿易赤字を縮小させる。
3:外国人観光客の増加は2016年も継続すると思われるので、これに起因する「外貨の受け取り」は、さらに増えるだろ。
1、2、3を考慮すれば、日本側の要因としては、円安要因は消えてしまった状態が継続することになる。
以上から推定されることは、130円という円安トレンドではなく、115円から120円のボックス、あるいは110円程度までの円高を想定しておいた方がよさそうだ。