2015年12月12日土曜日

2016年を考える_9_第四部:中国株式の投資環境_2:金融緩和と通貨下落

***2016年を考える_9 ***

第四部:中国株式の投資環境_2:金融緩和と通貨下落

(1)高成長から中成長への転換
既に世界第二位の経済大国になった中国、その経済規模が過去のように高成長で拡大することは困難だ。


過去に成長を遂げた国の例にもれず、中国の経済成長ペースは徐々に低下して、「高成長→中成長→先進国なみの低成長」という推移をたどるだろう。

同時に、景気変動の振幅度合いは低下して安定した経済成長に移行することも、過去に成長を経験した国々と変わらないだろう。

(1)高成長から中成長への転換
新興国株・資源エネルギー・重厚長大産業のバブルの崩壊の影響に苦しむ中国だが、その経済対策の遂行を妨げていたのは「通貨の下落を恥とする間違った自尊心」だった。


間違った自尊心を乗り越えて、欧米や日本が実施している経済対策と同様の「正しい経済対」の実施を政府首脳に進言して説得したのが、中央銀行総裁の周小川(Zhou Xiaochuan)だった。

彼は、金融緩和と通貨安という経済対策の王道、特にメンツを捨てて通貨安を実施するよう強く進言して、実施させた。


(2)2016年まで続く金融緩和
中国の金融は緩和されたとはいえ、リーマン・ショックに対応して発動された4兆元の経済対策中のやや引き締められたタイトな水準にとどまっている。

国営企業改革を円滑に進めるためにも、2016年もさらなる緩和が進展し、リーマンショック時の水準まで緩和される思われる。

 


(2)通貨の下落は微々たる範囲に過ぎない
8月に人民元の下落政策が発表されたとき、世界中の業界関係者は「連続的な大幅な切り下げ」を予想した。

しかし、下図で明らかなように、ここまでの動きをみると下落とは言っても誤差範囲内にとどまっている。


2016年の中国は、まずは金融のさらなる緩和が行われるだろう。
それでも効果が見られないなら、人民元のさらなる引き下げを実施するという順番になると推定される。



(2)輸出市場の経済低迷と中国製品の輸出競争力の低下

なお、人民元の長期チャートと外貨準備のチャートを並べて比較すれば、2008年発までの大幅な人民元の切り下げ(下図左のチャートの赤点線)によって、その後は外貨準備の増加ペースが鈍った(下図右のチャートの赤点線以降)ことがわかる。



1.人民元の切り上げによる中国製品の輸出競争力が低下したことと、
2.バブル崩壊後の世界経済の低迷によって中国製品の輸出増加ペースが鈍化したこと、
この両方が同時に悪影響を及ぼしたと推定される。

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