*** 2016年を考える_13 ***
第五部:日本株式の投資環境_4:雇用状況
(1)急速に改善している雇用状況
メディアでは「賃金が増えない」という報道が目立つ。
しかし、小売業は好調だ。
そのギャップを説明しているのが、雇用者数の増加と非正規雇用者の賃金の上昇だ。
上図で示したように、2012年から雇用者数が大幅に増加している。現在は年率約2%というハイ・ペースだ。
これはアベノミクスの成功により、企業の景況感と国内消費が活性化したことを受けて、企業が雇用者を確保する動きに出たことが大きい。
2014年には、2020年の東京オリンピックの開催が決まり、建設土木産業も建設現場労働者の確保に走り始めたことも寄与している。
一方、一人当たり賃金は、2014年までは低下を続け、最近になってようやく2010年水準を回復している。
小売業は、「一人当たり賃金 × 雇用者総数 = 支払い賃金合計額」の増加の恩恵を受けている。
(直前レポートに記載したように、外国人観光客と余裕のある熟年世代の消費の恩恵も受けている。)
小売業は、「一人当たり賃金 × 雇用者総数 = 支払い賃金合計額」の増加の恩恵を受けている。
(直前レポートに記載したように、外国人観光客と余裕のある熟年世代の消費の恩恵も受けている。)
賃金上昇の主役は、非正規雇用者だ。
下図に示されたように、アルバイトと派遣スタッフの時間給水準は大幅に上昇した。
半面、正規雇用者の賃金水準は春闘相場からわかるように、+2%台にとどまっている。
これが、「景気や株は良いのに、私(=正規雇用者)の賃金は上がらない」という不満の背景となっている。
(2)格差が拡大で内部分裂が始まる正規雇用者
「第一部:経済や社会のメガトレンド」で説明したことだが、日本でも該当する。
「第一部:経済や社会のメガトレンド」で説明したことだが、日本でも該当する。
上図に示したように、
1:好調な内需の恩恵を受けるグループ、国や企業から選ばれて賃金を優遇されるグループは、待遇の改善が継続するだろう。
このグループが、今後の日本の消費のけん引役として大きくなると考えられる。
2:一方、新興国の労働者との競争にさらされ、スキルを身に着ける努力とその成果を達成できないグループは、待遇の劣化が終わらないだろう。このグループは非正規雇用者との競争(仕事内容が同じなのに、賃金だけ高い、という状況にメスが入れられる)も激化するだろう。
こういう状況はまだまだ継続するトレンドであり、その結果、正規雇用者の内部の格差は拡大し、分裂傾向を示すと思われる。