トランプ大統領の特徴はどんどん変化する言動だ
トランプ大統領は、強い政治的な信念に基づくベキ論者ではない。
こうする方が現実的に良い解決策になるという企業経営者的な判断プロセスに基づく現実論者、それがトランプ大統領のDNAだ
古き良き政治家の伝統や既存の政治家であるがゆえの呪縛にとらわれない型破りな言動が目立つので節操がないとか定見がないとか、大統領らしくないとか、頭が空っぽとか、色々言われる。
そんな風評は聞き流して、投資家としては
「こういう状況なら、何がどうなっていくか?」、
「その時、世界はどんな反応を示すか?」
を先回りして熟慮&判断しておく方が賢明だろう。
「その時、世界はどんな反応を示すか?」
を先回りして熟慮&判断しておく方が賢明だろう。
大統領に就任して以降に起こったことで重要と思われることを再確認したい。
1:Nuclear Optionの行使
米国では法案は議会が作成、提出、議論、成立させる。大統領には法案提出権はなく、「こういう法案を作って欲しい」という希望を表明できるだけだ。
また、米国議会の特徴は強行採決のようなことが事実上封じられている。上院においては、フィリバスターという「無制限演説権限」によって採決を不可能にできる。これを止めるには、上院の5分の3以上の議員(60人以上)の演説打ち切り賛成が必要だが、現在の共和党上院は52議席しかない。
ところが、4月7日に最高裁判事候補の指名に関して過半数の投票で議事妨害(fillbuster)を無視して採決ができるよう上院運営規則を変えてしまうという「核オプション(nuclear
option」が発動された。
その直前まで、最高裁判事の任命で「Nuclear
Option」が行使され、US議会が深刻な対立構造になるか否かは重要な国内政治ファクターとして議論されていた。
しかし、7日に「Nuclear
Option」が行使されたことで、米国議会の慣例である「Nuclear
Optionを与党が行使しないなら野党に対する一定の妥協を前提に重要法案の成立を妨害しない」という紳士協定が崩壊した。
今後、野党民主党は、重要法案に対して徹底抗戦をするだろうから、重要な法案ほど成立が不可能になる。
下記は、4月8日日経朝刊
フィリバスター制度に関しては下記URLを参照
2:金融規制緩和の政策、財政出動の大幅増加政策の失速
オバマ政権によって導入された金融規制を撤回するという公約は大幅に後退した。トランプ大統領の口から、銀行と証券を分離するという発言まで飛び出す始末だ。
コロコロ変わるのがトランプ大統領だから、今後の方針も変わる可能性があるが、金融規制の撤廃はとん挫してしまったと判断してよいだろう。
コロコロ変わるのがトランプ大統領だから、今後の方針も変わる可能性があるが、金融規制の撤廃はとん挫してしまったと判断してよいだろう。
また、政府支出の大幅な拡大によって、道路や港湾などのインフラ近代化を実施する、メキシコとの国境に壁を建設する、などの大規模公共投資も大幅な変更を余儀なくされている。
財源と目されていた、オバマ・ケアの縮小による支出削減、対メキシコ&対中国への輸入関税による収入増加、いずれも消えてしまった。
財源が消えたのだが、それに代わる代替財源として国債の大幅増発は、民主党の抵抗があって簡単ではない。
2008年ごろからの世界的なトレンドは、乱痴気騒ぎで一般人に大迷惑をかけた金融業界の行動を監視し企業経営のモラルを回復させることだ。
そのために始まった金融機関に対する規制強化は、三歩進んで二歩下がる的なジグザクはあろうとも、そのトレンドは継続するという事だろう。
先進国における政府の税収不足が解消して財政支出による景気拡大という時代が来るのはまだ先だという事だろう。
金融規制強化と財政出動の制限はメガ・トレンドデアリ、反転は困難だと考えるのがよさそうだ。
3:嫌中国から親中国へ方針転換
米国の貿易赤字の半分は対中国貿易の赤字だ。
中国を為替操作国に認定するとか、中国からの輸入品に35%の関税を課すとか、過激な発言をしていたが、それを実行するための法的手続きが困難であること、しかもそれでは貿易赤字を解消できないことが判明してきた。
中国を為替操作国に認定するとか、中国からの輸入品に35%の関税を課すとか、過激な発言をしていたが、それを実行するための法的手続きが困難であること、しかもそれでは貿易赤字を解消できないことが判明してきた。
同時期に北朝鮮の核開発、大陸間弾道弾ミサイル開発を中止させるには、中国の力を借りるしかないことも明らかになってきた。
これを契機に「嫌中国」は撤回され、「習近平は立派だ」などのヨイショ発言も飛び出すなど中国との協調路線に転換され、為替操作国認定と輸入課徴金は消えていった。
南シナ海で米海軍が行っていた「航行の自由作戦」(中国が建設した人工島の近くで米軍艦船を航行させる)に関しても中止されるに至った。
3:消えた親ロシア
中国よりもロシアが好きだ、プーチン大統領には共感できる、と語っていた親ロシア的な態度は、政権チームの一員が規律違反を犯して解雇処分になるという不祥事に加え、ロシアがどさくさに紛れて北朝鮮との関係を強化する動き(万景峰号をウラジオストックへの定期航路として受け入れる)を見せたことから、一気にトーンダウンした。
ロシアのプーチン大統領の発言にも、トランプ政権への期待から失望へと変わったことが現れている。
NATO、中国、USに対抗するためにロシアは軍備の近代化&強化が必要だが、資源エネルギー価格下落後のロシア経済に見合った軍事費に縮小せざるを得ない状況に陥っている。
その結果、核兵器への依存度のさらなる上昇が明確になっており、米ロ間の軍縮条約に違反する行動も起こり始めている。
4:バノン排除で言動の自由を得たトランプ政権
トランプは国際政治に関する凝り固まった既成概念を持たない状態で大統領になった。その意味では前例のない柔軟性を持っている。
トランプ政権発足以来の変化は、正常化(トランプの進化)だと思う。
側近中の側近であったバノン氏(強硬な極右的差別論者)を国家安全保障会議から排除(4月5日報道、下記URL参照)したことが、政権の性格を良い方向に変えた。
それ以降、世界の政治経済&株式市場にとってはpositiveな変化が続いている。
facebookコメントヘ
facebookコメントヘ