(1)世界的に見れば中東アフリカ問題の方がはるかに実害が拡大しており、解決も複雑怪奇だ
中東には、中国のような覇権的なキャスティング・ボードを持った国家が存在しない
一方北朝鮮は、いざとなれば中国が殺傷与奪の権利を行使できる
日本は北朝鮮の核ミサイルの直接の被害国になる可能性がるので、日本のメディアは北朝鮮問題に偏重している。
しかし投資家としては、世界的に影響の大きい中東アフリカ100年戦争問題に関するアンテナを高くしておく方が良いと思う。
中東には、中国のような覇権的なキャスティング・ボードを持った国家が存在しない
一方北朝鮮は、いざとなれば中国が殺傷与奪の権利を行使できる
日本は北朝鮮の核ミサイルの直接の被害国になる可能性がるので、日本のメディアは北朝鮮問題に偏重している。
しかし投資家としては、世界的に影響の大きい中東アフリカ100年戦争問題に関するアンテナを高くしておく方が良いと思う。
北朝鮮としては、先に手を出したら、「待ってました!」と米国から倍返しで瞬間壊滅攻撃される、という状況だ。
米国としては、先制攻撃するには国際社会、特に中国とロシアの同意を得なければ攻撃後の後処理が泥沼になるというリスクがある。
現状では、米国の空母や北朝鮮のミサイル・核兵器はチキン・ゲームの道具という位置づけなのだ。
一方、使える武器もある。
米国側には、経済(貿易、金融)制裁という武器がある。これは使えるし、効果も大きい。
北朝鮮側には、サーバー・テロがある。サイバーテロは現状では武力行使とは認識されていないから、米国の倍返し攻撃を受けない。
北朝鮮は独裁国家なので、国民の不満が爆発する直前までは何をやっても国民が政権の基盤に影響を及ぼさない。しかし、米国のような民主国家の有権者は短視眼的で国際情勢に関心が薄く、遠い国への米国の関与を嫌気しやすい。そんな有権者への配慮もしなければ政権の維持が出来ないのが米国だ。そんな民主国家の弱点を利用しつつ北朝鮮はチキン・ゲームを遂行している。
経済制裁だが、どの国も鎖国しては生きていけない。特に北朝鮮はそうだ。
軍事物資は輸入しているし、資源エネルギー、食糧も輸入が多い。
北朝鮮国民の不満が高まることは金政権維持、特に金政権の正当性維持の最大の懸念ファクターだ。
3月以降、ガソリンの供給不足が起こり、ガソリン代の高騰と2-3時間待たねば給油できない状況が起こった。今後、食料品不足が拡大し、闇市でしか入手できなくなるなどに及べば政権維持の難易度が高まるだろう。
経済制裁とは、いわゆる兵糧攻めだ。北朝鮮国民と支配層の多くに対してジワジワと確実にダメージを与える戦略だ。
実は、歴史上でも多くの戦争は兵糧攻めだ。むやみに戦って味方の人的被害や戦費を拡大させることを避けてきたのが人類の戦争の歴史だ。
実は、歴史上でも多くの戦争は兵糧攻めだ。むやみに戦って味方の人的被害や戦費を拡大させることを避けてきたのが人類の戦争の歴史だ。
(3)貿易と金融は、飴と鞭
1:自国市場を相手国に開放して、相手国の商品サービスを販売させて経済的利益を与える
2:経済を発展させたいと願う国が希望するモノを輸入するために必要な貿易決済資金(現在はUS$)を提供する
3:貿易や金融の国際間の決済に関する金融制度を利用させ便宜を供与する
1、2、3を停止することは、その国に経済的被害を与えることになる
特に一旦提供していた便益を切られることは、それを当然のこととして経済運営している相手国に大きなダメージを与えることができる。
影響力を行使できる国とは・・・
1:豊かな国内市場があり、相手国の商品サービスを受け入れる素地があること
2:貿易収支、経常収支などの黒字があること
2:貿易収支、経常収支などの黒字があること
3:貿易金融制度を支えるハード&ソフトのインフラを保持していること
・・・こういう国が、外国に対して飴と鞭の影響力を行使できるのだ。
米国は、かつては1、2、3のすべてを保持していた。
しかし現在は、貿易赤字が膨らみ、トランプ大統領がアメリカ・ファースト(=貿易不均衡の是正)を唱えており、市場の開放という餌を提供するパワーは劣化している。
資金の提供に関しても基軸通貨国であるがゆえに、自分で印刷したドル札を供与すればよいという利点はあるものの、その余裕は陰りを見せている。
資金の提供に関しても基軸通貨国であるがゆえに、自分で印刷したドル札を供与すればよいという利点はあるものの、その余裕は陰りを見せている。
貿易や金融の国際間の決済に関する金融制度に関しては、米国は今でも強力なルール決定力&支配力を保持している
一方、中国は13億人を超える人口を武器に影響力を拡大し始めている。
北京政府や地方政府が押し付けてくる多少の不自由や理不尽さには眼をつぶっても、巨大な中国市場へのアクセスから得られる便益を維持拡大することは多くの国にとっては「何物にも代え難いのだ。
同時に中国は、巨額の貿易黒字で得た外貨(=US$)を使って、アジア・アフリカ諸国向けに巨額の資金援助やインフラ投資を推進している。
北京政府や地方政府が押し付けてくる多少の不自由や理不尽さには眼をつぶっても、巨大な中国市場へのアクセスから得られる便益を維持拡大することは多くの国にとっては「何物にも代え難いのだ。
同時に中国は、巨額の貿易黒字で得た外貨(=US$)を使って、アジア・アフリカ諸国向けに巨額の資金援助やインフラ投資を推進している。
さらには、中国自らが音頭を取って発足させたAIIB(アジアインフラ投資銀行)を活用して中国がルール策定権を支配する貿易や金融の国際間の決済に関する金融制度を作り上げようとしている。
(4)今の北朝鮮に影響を与えることができるのは中国
貿易&経済の対中国依存度は、北朝鮮は90%以上が対中貿易で死活問題レベルだ。
韓国も大きくて輸出の25%が対中国だ。日本は隣国としてそれ相応の18%だ。
中国から貿易面で締め出しを食らったら北朝鮮は即死するが、米国から締め出しを食らっても悪影響は無いに等しい。
韓国も大きくて輸出の25%が対中国だ。日本は隣国としてそれ相応の18%だ。
中国から貿易面で締め出しを食らったら北朝鮮は即死するが、米国から締め出しを食らっても悪影響は無いに等しい。
資金援助に関しても、米国は引き上げるべきもの(=悪影響を与えることができるもの)を有していない。
唯一米国が北朝鮮に影響力を行使できるのは、US$を使う交易決済を妨害することだ。
欧米の銀行に対して北朝鮮との取引を厳重に制限しているのはそういうことだ。
欧米の銀行に対して北朝鮮との取引を厳重に制限しているのはそういうことだ。
この点に関しても、この数年間中国が進めている「US$を介さない貿易決済、人民を使った貿易決済」を受け入れる国や企業が増えれば、米国の影響力は低下することになる。
(5)米中逆転がちらつき始めた
今回の北朝鮮問題で世界が気づいたのは、「中国の協力が無ければ北朝鮮問題は改善しない」という現実だ。
換言すれば、米国が中国の意向を無視してでも北朝鮮に対して軍事力を行使して政権を転覆させることができない時代になったという事実認識だ。
特に韓国の大統領が朴槿恵から文在寅に変わったことは、南北朝鮮全体が親中国化することを意味し、米国の示威的な軍事行動(共同軍事訓練など)が困難になることが予想される。
フィリピンと中国の争いでも、中国の「サンゴ礁の埋め立て&事実上の軍事基地化」を米国が阻止できなかったことによって、周辺国はアジアにおける米中の逆転への動きと認識してしまった。
この動きを逆転させるのは歴史の教えからすれば非常に困難だと言えよう。米中の力関係は複雑だが、いずれにしても両国の経済力の長期モメンタムがその帰趨を制することになるだろう。
facebookコメントヘ
換言すれば、米国が中国の意向を無視してでも北朝鮮に対して軍事力を行使して政権を転覆させることができない時代になったという事実認識だ。
特に韓国の大統領が朴槿恵から文在寅に変わったことは、南北朝鮮全体が親中国化することを意味し、米国の示威的な軍事行動(共同軍事訓練など)が困難になることが予想される。
フィリピンと中国の争いでも、中国の「サンゴ礁の埋め立て&事実上の軍事基地化」を米国が阻止できなかったことによって、周辺国はアジアにおける米中の逆転への動きと認識してしまった。
この動きを逆転させるのは歴史の教えからすれば非常に困難だと言えよう。米中の力関係は複雑だが、いずれにしても両国の経済力の長期モメンタムがその帰趨を制することになるだろう。
facebookコメントヘ