(1)二大バブルの連続崩壊
過去10年間で2回のバブルが発生し崩壊した。
一つは、新興国の株のバブル、もう一つは、資源エネルギーなどのコモディティ・バブル、及びそれに関する重厚長大産業バブルだ。
連続して起こった二大バブルの崩壊の悪影響を受けて、新興国の株式、特に資源国は軟調が続いている。
先進国と新興国の相対パフォーマンスだが、2010年11月から5年3ヶ月もの長期間「先進国>新興国」という状態が続いている。
資源国であるロシアとブラジル、そして投資家が経済に不安を感じている中国といった新興国の中の主だった国が冴えないことが背景だ。
そもそも新興国の株式市場の特徴だが、
1:先進国に遅れて底打ち上昇を開始する
2:上昇が始まると、普段は新興国など見向きもしない投資家が急に資金を振り向けるので、急騰を演じる
3:小さな市場に大量の資金が海外から流入するので、毎度のようにフェア・バリューを大幅に上回る価格までオーバーシュートする
だから、下落の際も手酷い状況になる。
普段は先進国にしか投資しないのに、新興国の大幅な上昇相場を見て、その良い所取りしようと思って資金を投じた外人投資家が泡を食って一斉に脱出する。
相場が軟調になると途端に流動性がなくなるのが新興市場の特徴、だから売るに売れない。
それでもとにかく脱出したい外人投資家が現金化のために投げ売りする。
だから出来高が無い中を株価が大幅に下落する。
こんな安値なら、1年後には儲かるかもしれないというレベルまで株価が下落しても、とにかく脱出した外人投資家は売りをやめない。
(2)FRBの金融政策の変更が転換点
2016年1~2月は、世界の株式が急落した。
下左側のチャートに示されたように、2014年初夏を起点とする「資源エネルギー重厚長大産業バブル崩壊」の最終フェイズがやって来たのだ。
崩壊の引き金は、米国の金融引き締めへの転換だった。
FRBによる形式的な利上げは、2015年12月だが、実質的な利上げ、つまり様々な金融緩和の特別措置の終了や縮小は、2014年初夏に始まった。
右側のチャートは、アトランタ連銀が発表している「実質的なFFレートの推移」だが、2014年初夏に反転上昇を始めている。
これが金融政策の実質的な引き締めの開始だった。
(3)大きな相場が終わってしまったのか?
相場が長期間にわたって上昇した後に、最終的に崩壊して、株式投資に適さない期間が長期化する・・・・それが起こるには2つのパターンがある。
1:金利が大幅に上昇して、景気が失速する。金融政策による不況だ。
2:何かのバブルが発生し、それが崩壊する。Boom & Bustによる不況だ。
今は、そのどちらでもない。
様々な懸念が引き起こす中間反落に過ぎない。
そのような調整は、米国の金融政策の緩和から引き締めへの転換期には良く起こっている。
下図に示されたように、過去においても、米国の金融政策の緩和から引き締めへの転換期には、毎度のように世界のあちこちの国の経済や市場で、様々なゴタゴタが起こっている。
世界経済や株式市場は、「米国の提供する”ビジネス決済手段としてのUSドル”」というUSドルの流動性という海の上に浮かんでいる船だと言える。
金融緩和とは満ち潮のようなもので、水深が深いので、船は注意しなくても自由に航行できる。
金融引き締めとは引き潮のようなもので、水深が浅くなるので浅瀬や岩礁に船底をぶつけないように細心の注意が必要だ。
しかし、満潮時のノー天気な航海に慣れ切ってしまった船は、今日から引き潮(=引き締め)と言われても、注意力が回復しないままの航海を続けるので、座礁するのだ。
座礁する船は、大型(国)、中型(産業)、小型(企業)、色々だ。
騒動が起きると、米国政府およびFRBは、自由主義陣営の国々(=米国のある種の支配下、影響下、配下にある国々)に配慮した金融政策に変更する。
具体的に言えば、引き締めを中断したり、その国々の問題が大きい場合は金融緩和に転換する。
1990年代には、そのような配慮が2度もなされた。
米国は1994年から好景気になった事から緩和から引き締めに転じた。
しかし、米国の庭と言われるメキシコで経済危機が発生したために、1995年の夏から緩和に転じた。
メキシコの処理を終えて1997年3月から再度引き締めを再開したが、1996年後半始まったアジアの通貨危機、および1997年から悪化したロシアの財政危機とLTCBの破たんに対応するために、97年の3月に一回利上げをしただけで引き締めは1年以上も中断され、1998年にはアジア危機とロシア危機の悪化に対応して、米国は金融緩和に転じた。引き締めに戻るのは、1999年6月であった。
2016年も世界経済は懸念委覆われている。
過去と同じように、足元の米国の金融引き締めは、引き締めの頻度、幅などが修正される可能性が高い。