政治勢力としての宗教右翼の台頭
1960年代以降盛んになった女性の権利の擁護と向上の運動〔フェミニズム〕の中でも、妊娠中絶の権利、同性愛の解禁、マリファナ解禁などに心情的に抵抗する保守的なグループは多かった。
彼ら彼女らはTVを通じて保守的な宗教を唱える宗派に賛同し吸収されていった。それに目をつけた共和党が、元来は民主党支持者であった彼ら彼女らを宗教を通じて共和党に取り込んでいった。
負け組労働者の民主党離反
自動車や鉄鋼などの産業が盛んな地域は民主党の支持基盤だったか、アジア勢の追い上げで、産業的には負け組に落ちていった。今ではRust Belt(負けて朽ちて錆だけが残った地域)と呼ばれるようになった。
巨大工場で比較的高い同一賃金を享受していた労働者たちは、アジア勢に負けた後は、サービス産業に吸収される事になったが、相対的には賃金水準は低下し、かつ労働者間の賃金格差が拡大した。
経済のサービス化は経済格差を拡大させる。
製造業は企業規模が大きく、同一賃金の労働者を多く発生させる。また労働組合など企業との賃金交渉も容易だ
半面、サービス産業は多数の小規模企業という状態であり、製造業労働者がサービス産業に移行することは同一賃金から賃金格差へと変化することになる、仮に移行前後で平均が同じであっても
民主党の大統領の時代には、有権者の大多数を締める中流とそれ以下の人々の意識は、富裕層からの配分を進める民主党の政策に満足感を示す傾向があった。
しかし、オバマ政権下の8年間では、それが起こらなかった。
オバマが心血を注いだ医療保険であるオバマ・ケアをもってしても評価は改善されなかった。
就任当初の期待が裏切られた格好だ。
就任当初の期待が裏切られた格好だ。
中流およびそれ以下の有権者、特にRust
Beltの労働者たちは、自分たちの生活を目に見える形で良くしてくれる政治家を求めるようになっていった。
その受け皿は、民主党の社会主義的な思想のサンダースと共和党の「America First」を唱えるトランプだった。
民主党大会でサンダースが候補者から消えた時、サンダース支持者はヒラリー・クリントン支持者として選挙人登録して投票所に行くことを拒否して棄権する割合が予想以上に多くいたし、中にはトランプ支持に鞍替えする者もいた。
勝ち組、上から目線のestablishment、というレッテルを貼られたヒラリー・クリントンは、
1:共和党に移った宗教的保守層
2:オバマの期待裏切りで減少した民主党支持者
という逆風で大統領選挙を戦った事になる。
それでも得票総数ではトランプを300万票以上も上回っていたが、アメリカ流の選挙制度の壁には勝てなかった。
女性であれ労働者であれ、「チャンスは平等、結果は不平等」という事が正しいと頭ではわかっていても、女性の権利の実現度合の格差や経済的な成功度合いの格差において、自分が負け組だとわかった瞬間から、「チャンスは平等、結果は不平等」とは少数の勝者のためのルールであって、多くの負け組にはアンフェアなルールだと感じ始めていた。
2000年以降、彼ら彼女らの所得が全く増えていないことも不満の原因となっている。
海を隔てた欧州でこの数年間で増大してきたのは、
1:反ブラッセル〔反ワシントンと同じ〕
2:反移民
3:反establishment
という意識だ。
移民や規制緩和で恩恵を受けるのは勝ち組、establishment、彼らに巣食う中央官僚&政治家であり、中間層以下の有権者の多数層には恩恵がない。
株式や不動産に投資をしていれば多少の恩恵はあるが、その分野でも恩恵の挽回というよりも「持てる者はさらに豊かに」という格差の拡大を生んでいるからだ。
つまり、欧米で同じことが社会現象として起こっているのだ
株式や不動産に投資をしていれば多少の恩恵はあるが、その分野でも恩恵の挽回というよりも「持てる者はさらに豊かに」という格差の拡大を生んでいるからだ。
つまり、欧米で同じことが社会現象として起こっているのだ
欧米において、彼ら彼女らは、負け組のためのルールを求め始めた。
求めるルールが、世の中の常識に反するとしても、多数のためのルールが正しいと思い始めた。
少数のためのルール、勝ち組のためのルールは間違いだと思い始めた。
少数のためのルール、勝ち組のためのルールは間違いだと思い始めた。
それを「競争疲れ、チャンスの提供や挽回する環境整備をすれば十分だ」と一蹴したのが民主党の中道派だったのだろう。
逆に、上手に政治的に活用したのが、共和党のトランプだったのだろう。
そして、それが2016年の大統領選挙の帰趨を制する分水嶺となった。
しかし、生き物の世界は適者生存だ
それは勝ち組のためのルールだ
人類は動物以上に福祉を考える生き物だという意識の元、勝ち組ルールに修正を加えてきた。
それでも救われない負け組を救う事が正しいのか否か、
20世紀には強力なイデオロギーが出現して救おうとしたことがあったが、それを目指した共産主義は破綻した。