(1)利上げを正当化する二つの理由
足元にはインフレがなくても中央銀行が利上げをする時に、それを正当化する根拠は二つある。
1:金利の正常化=異常事態の収束宣言的な位置づけ
2:数四半期後に景気が過熱してインフレが高進する=予防措置的な位置づけ
(2)正常化に対する疑問、New Normal論
昨年来、正常化に対する疑念が呈されている。
下図を使って説明したい
下図を使って説明したい
1980年代以降今日まで、景気サイクルの山の高さと谷深さは、「より低く&より浅く」という傾向が続いている。
経済のvolatilityの低下は現在も続いているので、これまでの景気サイクルでは正当であった「利上げタイミング、利上げペース、利上げの幅」は現在では「早期すぎる、急ぎすぎる、大きすぎる」という不適当な措置になって持続的な経済成長を阻害してしまう。
とりわけ二個のバブル(リーマンショック前のバブルと、中国4兆元経済対策バブル)が連続して崩壊した後の景気回復フェイズでは、金融機関の体力が弱まっているのに加え、導入された厳しい金融規制により金融機関が果たすべきリスク・テイク能力が制限されている。
このような環境下では非常に低レベルの経済成長しか起こらないので、利上げは制限的に実施されるべきであるし、現状では未だ不要である。
「世界は以前とは異なる「新秩序=“New Normal”」になっていると主張される。
ローレンス・サマーズ教授などが主張する「New Normal論」だ。
(3)景気過熱&インフレ懸念に対する反論
「利上げしなければ、数四半期後に景気が過熱してインフレが高進する」から予防的に今から利上げする、これは将来判断である。
この将来判断だが、景気回復が良好な米国ですら、昨年12月におけるFRBの判断と今年3月における判断を比較すれば「利上げが必要なほどには米国経済は強くない」という方向に判断が下方修正された。利上げの回数予想も「年4回の利上げ→2回」に下方修正されている。
米国や中国の動向に大きな影響を受ける日本経済に関しても、経済の見通しは下方修正され、その修正幅はより大きい。
(4)中国は大きすぎてつぶせない(China
is “Too Big to Fail”)
資源エネルギー価格の暴落で苦境に陥った「ロシア、ブラジル、ベネズエラ、メキシコ」は通貨が大幅に下落するなど投資家を懸念させている。
中国経済も以前ほどの力強さは見られない。
中国経済も以前ほどの力強さは見られない。
中国をはじめとする新興国経済が立ち直るまでは利上げは極力回避すべきである。特に、世界第二位のGDPである中国経済の不振は巨大なブラック・ホールのように先進国経済をデフレの闇に引き込んでしまうリスクがある、中国は大きすぎてつぶせない(China is “Too Big to Fail”)・・・そんな認識が広がりつつある。
2月と4月のG20を通じて、世界経済に関するコンセンサス的な考え方は、次の2項目に集約される
1:2月の上海G20会合で上記の新興国経済への懸念が共有された。
つまり、新興国自身の自助努力だけでは無理なので、先進国が手助けすべきだ
1:2月の上海G20会合で上記の新興国経済への懸念が共有された。
つまり、新興国自身の自助努力だけでは無理なので、先進国が手助けすべきだ
2:新興国経済に対する悪影響を緩和するために、特に借り換え時の資金調達を助けるために、ドル高と米国金利上昇を回避すべきだ