2015年8月4日火曜日

上海株の暴落_5今後の市場動向に関して押さえておくべきポイント

(1)株式の価格形成に最も重要なことは、利益の増加、および将来利益に対する信頼感である。
下図は、上海株式市場の株価、実績EPSPERの推移だ。
過去1年余りの株価上昇は、利益の減少の中の株価の急騰、つまりPERが急上昇することによる株価水準の大幅な上昇であった。
12か月後の利益が+30-40%という予想がコンセンサスになっているなら、そして24か月後も+20-30%の利益成長があるという信頼感を投資家が持っているなら、約1年で2.5倍の株価上昇も成立する。
それ以前の上海市場の株価水準が悲観の極にあったからだ。
しかし、現状では12か月後+30-40%、24か月後+20-30%という予想はどこにもない。上海株式市場が本格的に立ち直るには、企業利益の改善が急務である。

(2)上海市場のvolatilityの高さは、長期間にわたって修正されない。
上海市場が外人投資家に広く開放されるまでは、上海市場の売買シェアの過半が短期投資家である状態が続くだろう。
そのために、個人投資家の特徴である強欲と悲観の間を行ったり来たりする傾向(high volatilityが続くだろう。

 残念ながら、今回の株価の暴落後の中国当局の措置を観察していると、株価の暴落の犯人を外人投資家に押し付けるようなコメントが散見される。
上海市場の外人投資家への開放の拡大は遅れるだろう。

(3)香港市場のPERはフェアである
下図は、過去10年間の香港株式市場のPER(緑:実績PER,茶:予想PER)だが、現在のPER水準は、やや低い水準にあると思われる。

香港市場だけに上場されている銘柄は、上海市場の動向に左右されずに、その企業の利益動向などによって株価形成がされやすいだろう。
一方、両市場に上場されている銘柄は、今後もファンダメンタル以外の要因に株価が影響を受け続けるだろう。
  
(3)その他の留意事項
1:そもそも今回の上海株式市場の大幅下落は、「高値警戒感から、揺り戻し的な反落が発生しても何ら不思議ではない水準」に市場があった、という要因が大きい。
2:投資家は、愛国心で株を買うのではない。
儲けたいという欲望一心で自分の財産を株式市場に投じている
だから、儲からないと感じれば、さっさと株式市場から資金を引き揚げるものだ。
3:2008年11月は、4兆元の資金を実経済に投入した。
資金の投入先の良し悪しは別にして、現実の経済に資金が投入された結果、企業の利益が増大し、それを受けて株価が上昇した。
4:2015年6月以降の北京政府の対策は、株式市場に資金を投入する「いわゆる買い支え、PKO」と呼ばれるもので、企業の利益には何も好影響を与えない。
日本の失われた20年でもそうだったが、歴史的にも「買い支え、PKO」は株価形成を歪めてしまい、株式市場がフェアバリューに回帰するまでの時間を遅らせてしまった。
その結果、投資家を市場から離散させることになった。