2017年7月27日木曜日

人口減少の悲劇: コミュニティが破壊される

1:人口減少は日本全体では不可避、都市&田舎間格差を増長
人口減少都市への人口集中が同時に進行しているのが21世紀の日本だ。
それを端的に反映しているのが自動車の保有台数の推移だ

 

都市交通の発達、男女交際の形態の変化、マンション居住者の増加と安価な駐車場の不足、これらが相まって都市部での車の保有は着実に減少してきた。田舎では車がなければ生活が成り立たなくなっているので軽自動車中心だが保有比率は高止まりしているが、全体の引き上げには足りない。

ここまでの減少だが、デート用、ドライブ用など、主としてレジャー用の車の保有が減少しただけだ。
これからは、高齢化要因(85歳以上では手放す人が増加)での減少が加わるだろうし、10年後は、カー・シェアリングの普及による個人所有の減少が統計上に目に見えて反映するほどになっているだろう。

2:田舎に残る高齢者が死亡すれば、廃屋だけが残る
人口の減少、利用者の減少で田舎では民間の交通インフラの維持が不可能になった。
そうなると個人所有の車が無ければ生活の維持が不可能だ。
しかし、80代後半の高齢になれば健常者レベルの運転が不可能になる人が増加する。
家族や親せきが
引き取るか、サービス付き後者者向け住宅に移るしかない状況に陥る田舎の高齢者が激増するだろう。



都会では状況が異なる。アマゾンがあるから、ネット・スーパーがあるから、買い物用の車は不要と思う人が増えている。
ショッピングの意味や位置づけが変化したのだ。楽しくてリッチな気持ちになれる時間を過ごすのがショッピングであって、生活必需品の購入は簡単に短時間で事務的に処理したいと考える人が増加している。買い物の使い分け進んでいるのだ。
都会では、一人暮らしの高齢者でも何とか生活できるので、都会の単身高齢者は大幅に増加するだろう。

文化的な生活を満たす施設の充実、電気ガス水道をはじめとするライフ・ラインの高いレベルでの完備など、総合的に考えれば都市の有利さが目立ってきたので、可能な人から都市への移住が進んでいる。
その結果、田舎では「空き家  廃屋  遺棄不動産」という状態が増えている。

3:消防署と町役場と小学校が同居
私の祖父母の住んでいた田舎は、昔は賑やかだった。
15人兄弟の末っ子の父に連れられて盆と正月には親戚回り&墓参りをした。
今では、父を除いて父親世代の親戚全員が亡くなり田舎には誰も住んでいない。
子供世代は全員が都市に住んでいる。認識できるだけでも、10世帯40人以上の人口が消えた。

祖父母の住んでいた家も長らく空き家、そして廃屋になっていたが、町役場から治安上の理由から取り壊しのお願いを長年言われて一昨年更地にした。
Google Map
で確認すると、両隣を含め4軒あった近所の家がすべて更地になっていた。

また、人口減少の結果、私の田舎ではかなり以前から消防署と町役場と小学校が同居するようになっている。それぞれを個別維持するあめに必要財源と人材が消えたのだ。
その周りに小さな商店があるが、かつて町の数か所に点在していたその他の商店は全て店を閉じた。

国の不動産管理という観点でも問題が大きくなってきた。経済的に成り立たない家や土地は、相続時に所有権の移転登記がされない。法的には登記の義務がないし、登記すれば固定資産税の支払い請求が来やすい。
だから移転登記をしないのだ。

(上は、6月の朝日新聞、http://www.asahi.com/articles/ASK655VDZK65UUPI005.html

登記制度の不完全さから、所有者不明のまま、廃屋になり、遺棄される住宅が増加中だ。
経済的に成り立つ(=そのままで第三者が再利用可能)空き家は、1000戸のうち3-4戸にすぎないとも言われている。


4:投資価値は都市に集中する現実
投資は寄付(=元本の放棄)ではない。それなりのリターンが要求される。
庶民のお金を集めた預金やファンドの資金を投資する場合には、資金を出した側が納得するようなリターンが要求される

同じような経済的な資金の使途であっても税金の場合は政治的なファクターが加わる。
税金の使途においては、経済的なリターン政治的なリターンとが考慮される。
政治家にとっては、経済リターンはゼロでも、有権者の票という政治的なリターンが大きければ、裕福な場所から税金を奪って、その場所に投入(再配分)する価値があると判断され、その地域やそのグループに対して税金が湯水のごとく投入される。

しかし、政治的なリターンが低下すれば、その地方、そのグループは軽視される。
田舎の人口が減り、選出される議員が減れば国政に与える政治的なリターンも低下するのだ。

住宅購入は民間経済の重要な構成要素だ。その購買決定に際して・・・

(1)誰だってライフ・ラインが充実し、快適で文化的な生活が可能な都会に住みたいと考える
これは、「全員が農業の義務を強いられる」状態か人類が解放され、都市と農村の分業が成立して以来、世界共通に継続しているトレンドだ。

(2)都心に住む=通勤30分、郊外に住む=90分、一日2時間の自由時間が生まれる。年間200日通勤で400時間、10年間で166日。
この時間をお金の価値に換算すれば、都心と郊外のマンション価格差はもっと拡大すると推定される。

 

2020年の東京オリンピック閉会後に選手村が、5500個のマンションとして分譲される。
69㎡7000万円と報道されているが、この水準は現状の約二割引きの価格だ。

価格はともかく、5500世帯が都心に引っ越しすることは確実に起こる未来図だ。
都会への人口集中加速を象徴する出来事になるだろう。


5:地方の山間部での自然災害はコミュニティを破壊消滅させる
人口が減少すれば税収が減るので、以前のように充実した「電気ガス水道などのライフ・ライン」を維持する予算が出せなくなる。騙し騙し使っていくことになる。

しかし、どうしようもないのが自然災害だ。
災害から復興するには巨額の資金が必要だ。
国も地方も無い袖は振れない状態の財政状況だから、どこに資金を振り向けるべきかという優先順位を決めなければならないという厳しい現実に直面する。

例えば、隣町につながる道路は復興する価値があるから優先的に復旧される。。
しかし、その先に山しかない道路は復旧が後回しにされ、結局は普及されないまま遺棄される可能性が高まる。
林業は今以上に苦しい産業になるだろう。


6:マネーロンダリングに悪用される日本の不動産
買い手がつかないような離島や雑木林が突然購入される事例が6-7年前から増加している。買い手は外国人、その多くはタックス・ヘイブンに設立された法人だ。

マネーロンダリングに悪用される日本の不動産という政治レポート記事も散見される。
尖閣諸島の所有権問題も、個人所有だった尖閣諸島を外国人が購入する可能性が出たために国有化になったという説も聞いたことがある。

田舎の不動産、雑木林、小島を、海外のタックス・ヘイブンの法人が購入した後、所有権が年間50-60回も変わることもあるが、その所有権移転登記はなされない。
町役場も固定資産税を請求できない。

しかも、売りたいと思う日本人の所有者は増加する一方だ。

田舎だけではない。都心でも同様な事例は起こっている。

専業の不動産投資家として有名な「どエンド君」氏が新宿を調査したところ、たった10㎡の土地にタックス・ヘイブン法人の登記がなされたいたのを発見している。

 


登記簿の閲覧は誰でも可能だ。
不動産業者は、この「全国あちこちで起こっている外人法人の土地購入」の事実を常識として認識しているようだ。


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