2016年7月29日金曜日

中国の民主化 (5) 共産党の中国

1:中国における正当性・分け前
中国が国家建設をした1940年代、毛沢東は国民(主として農民)に夢を与えて革命を成功させた。

都市部は国民党が抑えていたため、支持基盤を農民に置く戦略を採用するしかなかったのだが、革命後に経済重視という政策に変更できず、生産性の低い農業に拘泥した結果、近代化の約束(経済成長の恩恵の配分)を果たせずに失脚した。

その後、文化大革命(都市産業否定、農民励賛)という権力奪取のための内戦を起こし、反対派を粛清し権力闘争に勝利した。文化大革命期の10年間(1966~1976年)は、反対派や人民の不満を抑えるべく恐怖政治(密告制度)が採用された時代だった。   

しかし、やはり長期的には
経済成長による分け前が欠かせない。それが無ければ民衆の不満が爆発する。毛沢東の死を契機に、経済成長を約束する鄧小平に権力が移った。鄧小平は中国独自の社会主義を再定義し、経済改革と社会の開放に着手し、今日の経済発展の基礎を築いた。

被支配者が、支配者に正当性を与えるのは、国家建設と経済性成長による「恩恵の分配」による部分が大きいが、中国人は「お金、お金、お金」だから欧米よりも経済的分け前が正当性付与で重視される。
経済的恩恵を与えた人間に対し「天命が与えられている」と判断するのだが、現在の恩恵は、衣食住の「住」である住宅不動産と社会サービス・年金医療であろう。

経済が低迷する状況では、支配者は「正当性の消滅」を危惧する。特に、共産党一党独裁政権下では、共産党一党支配の正当性維持はことさらに重要だ。
選挙がない、つまり選択権を国民から奪っているゆえ、「共産党の一党独裁の現状でもOKだと国民を納得させる必要」がある。
経済統計の数値へのこだわりや統計の過大発表疑惑を始め、4兆元の経済対策などの経済に対する過敏な反応は、正当性消失への恐怖を表している。

経済が弱めなら、分け前が増えないので、正当性を維持するための「別の努力」が必要になる
綱紀粛正、不正追放などという国民が留飲を下げるようなパフォーマンスを演じて共産党統治の正当性を維持しようとする。

思想統制、密告制度という恐怖政治で体制の引き締めを図ることも頻繁に見られる。

さらには、強力な国家を作っているという国内向けの宣伝を盛んにして、対外的な強硬路線を採用し海外を悪者にして国民の不満を海外に向けさせる政策が採用される。

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