2015年6月1日月曜日

地政学リスクの基礎知識(1)サマリー

(1)地政学的リクとは
21世紀における地政学リスクとは、(a)宗教問題、(b)民族問題、特に少数民族問題、である。


上記2つの地政学リスク(=現実に起こっている地域紛争)は、1920年以降米国が主張してきた下記2個の矛盾する原則から生じている。


(a)民族自決原則(各民族は自分の国を持てる)
少数民族は、属している国から独立するか、他の同民族の国家に編入してもらう権利がある。


(b)武力による国境変更禁止原則
現在の国境を暴力的に変更することの禁止


独立の可否に関して、国全体で投票すれば、少数民族は少数だから、独立を認められない。
だからと言って、暴力的な独立は認められない。


2大原則は明らかに論理矛盾である。
この矛盾が生んだ副産物が21世紀の地政学リスクである、と言うこともできる。


(2)米ロ冷戦時代に見られた「東西陣営の対立」は、旧来のパワーゲーム的な地政学リスクであり、コントロールが容易なリスクである。
大国である米国やソ連(現在のロシア)は、各陣営の親分としての自覚と破壊的な戦争に対する自制心があったからだ。

その意味では、現在台頭中の中国が引き起こしている「アジア地域での緊張」は、民族問題も宗教問題も絡んでおらず、旧来のパワーゲーム的地政学リスクの範疇に属するものだ。


中国の台頭に対して、パワーゲーム的には米国がアジア諸国の親分として行動しており、かつ米中ともに大国としての自覚と自制心がある


さらには、米ロ冷戦時代と異なり、米中関係は経済的に密接な関係にあるので、米中ともに米中関係を付かず離れず状態に維持したいと考えており、アジア地域の摩擦を沈静化させる力が働きやすい。


同様の事は、ウクライナ問題でも言える。
米国、ロシア、そしてドイツ(特にメルケル首相)は、ウクライナ問題に対して大人の対応をしているので、管理された危機に過ぎないだろう。

facebookコメントヘ