1990年代以降、先進国ではJobless Recovery(景気や企業業績の改善の割には、雇用の改善が見劣りする)が続いている。
その背景は、1990年以降に起こった経済的な意味での国境の消滅、グローバル化だ。
企業は国際化してマルチ・ナショナル企業として国境を越えて活動している。
どこで何を生産して、どこで販売するのが最も儲かるか、それを真剣に考えて日々行動している。
特に2000年代中盤に起こった新興国ブーム期には、生産部門が先進国からコストの安い新興国に大量に流れ出した。
総需要の伸びが低い状態でも、コスト低減効果を享受した企業の利益は大幅に増大した。
新興国には新しい職(Job)が大量に生まれた。
一方、先進国では職(Job)がジリ貧になった。
先進国でやるべき職の内容が大きく変化したのだ。
製造そのものではなく、何をつくるべきか、誰に何を提供するべきか、いわゆる「意思決定」に関する職に比重が移ったのだ。
企業が先進国内で資金を投ずる分野も、製造機械や工場ではなく、意思決定を効率化、正確化する「ソフトウェア、人材」などにシフトしている。
先進国の国民は、やらせてもらえる仕事、自分ができる仕事、それを受け入れるしかない。