2020年4月9日木曜日

推薦図書:ゴールド

本のタイトルは"金、Gold"である。
何故、人類はGoldに魅せられ、その虜になり、その呪縛に苦しんだか、、その歴史である。数量に限りがある物質・金属を通貨にしようした場合、それが経済発展を制限する要素として作用する様子が教訓として描かれている。

別の観点から見れば、人類の経済の発展が、
(1)物々交換経済
(2)前期貨幣経済(金属貨幣)、
(3)後期貨幣経済(金本位制)、
(4)現在(金本位制崩壊後)、
という変遷をどのようにたどってきたかが、金融・運用の専門家の立場から見事に描かれている。
特に第17章以降の記述は素晴らしい!

物々交換経済の時代は、相手の提供する商品の価値をどの程度信用するかが重要であった。

金属貨幣の貨幣経済の時代は、商売、貿易(=交換)に使用する媒体としての金属貨幣の価値をどの程度信用するかが重要になった。しかし、問題は取引規模が増えても、それに比例して金属貨幣(金貨)を増やすことが出来ないため、経済発展のスピードが金貨の鋳造速度で頭を押さえられることであった。



その後、ゴールド・ラッシュなどの金の生産の飛躍的な拡大と、経済の爆発的な拡大が起こった時、『いざとなれば金と交換しますよ』よいう約束のもと信用貨幣、信用紙幣を利用することに踏み込んだ。そして、たまたま金本位制という制度として安定的経済発展状態が出現した。しかし、金本位制は好調な経済の結果であり、金本位制が安定的な経済の基礎では無いことが露呈する。これで徐々に金本位制は崩壊するが、『金本位制が安定的な経済の基礎』であるという妄想が1920年代から1930年代の経済の大混乱と第二次世界大戦を引き起こすことになる。

しかし、金本位制崩壊以降に関しては不満が残るところである。
その点に関しては、この本は『新しい金融論』とセットで読むと価値が高いと思われる。
何故なら、『新しい金融論』が、(4)の時代を信用経済の時代として描いてくれているからである。

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