2017年12月16日土曜日

豊かな人生のためには「信用」が重要だ

前回の続きです
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(8)信用が人生を豊かにする

 
中国人の買い物の支払いと言えば、銀聯カード(UnionPayと言われたのは、もう昔の話
今では、AlipayWeChatPayが中国全土を席巻している

 上海に観光やビジネスでいけば一目瞭然だが、中国人は現金をほとんど使わなくなった。
代わりにスマホをかざして支払う「AlipayWeChatPay」が猛烈な勢いで伸びている。

AlipayWeChatPayが伸びている背景だが、
1:
安い、簡単、早い、便利を実現した、そして
2:
信用が人生にとって重要だという認識が常識化した
ということだ。


1の「安い、簡単、早い、便利」は古今東西同じである。
銀聯カード(UnionPay)はCredit Cardであり、短期の信用調達コストが発生するが、AlipayWee Chat Payは、スマホを使った同時決済であり、時間差という信用リスクが発生しないので、販売側も「安い、簡単、早い、便利」の利便性を享受できる。
しかし、2の「信用が人生にとって重要だ」という事は中国社会にとっては革命的な出来事だ。
これまで中国社会で最も欠けていたものが信用だった。
二重帳簿、三重帳簿は当たり前、家族でも一部の人間にしか本当のことを教えない。

商品やサービスの価格は有って無きがごとしの不透明で、値切り交渉や駆け引きが前提、請求されるまでは払わない、請求されても色々な理由をつけて払わない、そんな非効率な社会が中国だった。

社会の構成員間の相互信頼が低いが故に、取引のコストは高くなり、社会の安全感維持のためのコストも高くつく。そういう状況が続いてきた。
しかし、習近平政権の始めた腐敗撲滅運動と軌を一にするように始まった「QRコードをスマホで読み取るAlipayWeChatPay」が中国社会を変え始めた。

悪いことをしようとしてもできない(リスクが高すぎる)社会、人を騙そうとしても騙せない(割が悪すぎる)社会をデジタル的につくり上げ、「ルールを守り、真面目にコツコツやったほうが結局はトクだ」という仕組みを社会に広め、自然に人々に「良い行動」をさせるのだ。
アリペイには付随機能として「芝麻信用」という信用情報管理システムがある。
支払をしなかった、レンタル自転車を川に投げ込んだ、様々な反社会的な行動は個人の信用記録として残る。


レンタル自転車ごとき少額のトラブルで信用スコアが減点されれば、将来もっと大事な住宅ローン金利が他人よりも高くなり数百万円もの負担増加(=経済損失)を受けることになる。
それを認識した中国人は急速により良い経済人になりつつある。
信用こそ人生にとって最も重要、信用スコアをアップさせることは人生を豊かにする、それを認識した中国人は「信用本位制資本主義という現代社会」において世界の先頭を走り始めたのだ。




(9)日本の現状
1:日本でも「AlipayWeChatPay」のようなサービスができるようにという審議会が始まっている。11月にそこで決まったことは、「3年間議論をして、どんな条件で誰に許可するかの方向を出す」、その3年後の答申を受けてから具体的な各論を検討する、という内容だった。

要は、3年間は何もしないという事だが、その背景には・・・
省益あって国益無しの懸念という側面ではあるが、デビット・カードは金融庁、クレジット・カードは経済産業省という管轄の違い、「AlipayWeChatPay」のようなサービスの流布による両省間の損得の違いというせめぎあいがある。

日本版「AlipayWeChatPay」はクレジット・カード産業に打撃である。銀行もクレジット・カード・ビジネスで多額の利益を得ている。日本版「AlipayWeChatPay」は「安い、簡単、早い、便利」であるから、小売店の負担が減り、クレジット・カード会社と銀行の受け取り手数料を減らすのだ。

2:フィンテック企業の低コスト送金決済業務への参入に関しても、それが銀行利益を侵害するという点で日本では当面は実現しそうにない。
強力に保護された銀行の権益の中でも送金業務は銀行の占有業務という特権的な立場を死守したいという業界の強い意向が存在する。

おそらく、金融業界に変革を起こしている「安い、簡単、早い、便利」革命だが、日本は中国に10年遅れることになりそうだ。


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