2016年9月16日金曜日

金利上昇が経済を活性化させ、経済を浄化し、格差を拡大させる

US経済は健全さを回復し、順調さを増している。  
一般人は景気の足腰が強くなることを歓迎する 
しかし、株や債権の投資家は歓迎しない 

金利の上昇は債券価値を引き下げるので、債権の投資家には悪夢だ。金利が一旦上がりだせば、一定レベルまでは上昇が続くので、その間は保有債権が損失を被り続ける。 

株式投資家にとっても、金利の上昇は株の価値を計算する際の「割引率上昇=コスト上昇」を意味するので、株価のフェアバリューが低下してしまう。 
ただ、しばらくすれば経済の正常化の恩恵によってEPSが増額修正されるから、株価は下落調整分を乗り越えて高値を更新するものだが、その間の下落幅や調整期間の長さは悩ましいものだ。 

もっとも先物やオプションがあるから、空売りポジションを現物以上に持てば、金利上昇局面でも利益を出せる。
それは債権でも株式でも同じだ。
そうは言っても、空売りを大々的に使う機関投資家はほとんどいない。 

過去の事例が教えてくれることは、金利上昇が景気を殺すような水準になれば、「経済の正常化の恩恵によるEPS上昇」は消える 
だから、その時は株式からは撤退すべきだ。
しかし、殺さない金利水準であれば期間利益率は低下するものの株価は上昇を続ける。 

したがって、次回のFedによる利上げは「景気を殺すか否か」というポイントのみにフォーカスすれば良い。 
おそらくは次回の利上げ(9月だろうが、12月だろうが)は非常に限定的な幅に留まるので、景気を殺すことは無いであろうと、春山は思う。 

ここまでは普通の話だ。 
これ以降が今回の特異な重要項目だ。  

普通なら金利上昇は景気モメンタムを低下させる。 
しかし、現状においては長期金利(=企業の借り入れ金利)を上昇させると景気が加速するかもしれない 

2016年の春までは、どんどん金利を低下させた。

景気が好転しても、リーマン・ショックの後遺症が残っているので心配だという理由から、世界中の中央銀行が前例の無い金利低下を演出した。

日欧では長期金利までがマイナス金利になった。 

このような状況では、金を借りてビジネスをしようと考えている側からすれば、待っていれば、もっと安く、もっと大量に借りられる」という状態なので、企業は金を借りてビジネスをする投資行動を先送りさせた。 

しかし、これで金利低下が打ち止めだとなると、「ぐずぐずしていると、金利が上がるかもしれないし、借り入れ希望金額も削られるかもしれないという「焦り」が生じる状況に変化する そもそも景気は底打ちして好転しているのだから、ビジネスの失敗リスクは景気の最悪局面よりは遥かに小さいのだ。 

つまり、2016年の世界の状況からすれば、景気のさらなる改善のためには、「長期金利が上がりそうだ」という雰囲気が必要なのだ。
債券用語的には、長短スプレッドのワイド化、イールドカーブのスティープニングが必要なのだ。

ただし、長期金利上昇による景気改善の恩恵は不平等に起こる。
やる気のある企業、リスク・テイクの旺盛な国や民族、伸び盛りの産業、そういった処には恩恵が
大きいだろう。

反面、自ら行動しないブラ下がり族が多い企業、横並び意識に支配された国や民族、成熟した産
業、そういった処には恩恵は無いだろう。


さらには、金利上昇は「正常な経済と金利の世界では生き延びられない、異常な低金利でのみ生存可能な企業を淘汰する」という経済の浄化作用を発揮する。


金利低下は広い範囲に恩恵をもたらすが、金利上昇は狭い範囲に集中した恩恵の配分になるのだ。

その結果として、正常な格差への回帰、異常な低金利が維持してきたアンフェアな平等の是正、、、結果としての格差拡大が起こる。



投資に際しても、恩恵が配分される所に資金を集中すべきだと思う。