2017年10月24日火曜日

8-9月の情報収集:FinTech, Bitcoin, Blockchainと金融


1:フィンテックの効能
(1)フィンテックとは、利用可能なデータの分析&活用のレベルを引き上げる技術である。
データを分析することにより、
見えなかったものが見えるようになる。
その結果としてこれまでは
できなかったことができるようになる

 
(2)またフィンテックによりトランザクション・コストが激減するので、その結果として安くて安全な金融サービスが生まれる
同時に当然起こることだが、高価格&高マージンの既得権に安住するグループは衰退を余儀なくされる。


2:不動産と人件費の高さが日本経済の発展を阻害していたが、失われた20年のおかげ+アベノミクス効果で、日本のビジネス環境は好転した
1990年代以降の日本ではビジネスが困難だった。
土地や不動産の賃料が海外に比較した絶対レベルで高く、人件費も高かった。加えるにデフレ圧力があった。これでは、企業からすれば、コストが高いのに、デフレのために売り上げが伸び悩むことを意味した。

そのために欧米企業は、トップ・ラインの伸びが期待できるアジア・中国・インドを目指してビジネスを展開した。企業には名目成長が必要だからだ。

しかも、3.11の震災が起こりカントリー・リスクを考慮しなければならず、外資系の日本支社長は欧米本社の社長に対して日本でのビジネスの拡大提案をする際に苦慮してきた。

アベノミクス以降ようやくデフレ圧力が弱まり売り上げの伸びが期待できるようになった。また、長期間にわたる不動産価格の下落や賃金の伸び悩みと超円高の修正により海外比較でのコストも改善された


 3:質的に変化したビジネスの考え方、組み立て方
アベノミクスの数年前から時代が変わり始めていた。
企業中心(日本的に言えば、お上&企業の上から目線)の時代がユーザー中心の時代に変わったのだ。「The Age of Customer」と呼ばれている。
過去と異なり、企業とユーザーが直接つながるようになった。
企業の商品やサービスに関する情報がインターネットを介して、ユーザーに直接提供することが可能になった。しかも、それまでの仲介者を通じて提供していた時よりも遙かに膨大な量の情報を簡単に分かりやすく詳細に伝達できるようになった。


4:変化の事例
(1)車の購入プロセス
以前は購入までにカー・ディーラーに平均7~8回行っていた。
どの車が自分に適した車かを判断するための性能と価格の情報を得るには、複数のディーラーに行く必要があった。ディーラーのセールスマンは車に関する情報を顧客に分かりやすく伝達するスキルが求められた。

今は、違う
インターネットを通じて、自動車会社から詳細な車に関する情報が入手できる。
自動車評論家からは、性能と価格に関する他車との比較情報がタイムリーにネットに掲載される。
自社の車しか知らないディーラーのセールスマンよりも、車の購入に役立つ比較情報は顧客の方が豊富な時代になった

顧客がディーラーを訪問するのは、最終的な決断をするために必要なオプションなどを含めた価格とファイナンス(ローン、リース、現金)情報を得るという部分がほとんどになっている。
 つまり、ユーザーが必要とする情報が変化したのだ。

(2)Lifetime Value
コンビニに関してだが、都心部では、来店客の70%が通りすがりだが、郊外では、70%が地元の人(=community構成員)だ。
郊外店舗では、communityの持つLifetime Valueが重要になる。communityに対して半歩先回りして商品やサービスのsuggestionをする戦略が効果を発揮する。
それにはcommunityの構成員に関するデータが必要だ。年齢、性別、家族構成、買い物の種類、購入パターン、金額などは、宝物データだ。

Lifetime Valueとは、企業と顧客が継続的に取引をすることによって、顧客が企業にもたらす価値(利益)を指す。 Lifetime Value(ライフタイムバリュー、LTV)やCustomer Lifetime Value(カスタマーライフタイムバリュー、CLV)とも呼ばれる。

セールスフォース社(CRM)とライザップ社(RIZAPのコラボビジネスだが、
痩せると着る服が変わる、前向きの服装をしたくなる、前向きの人生を生きたくなる、RIZAPは単に痩身ビジネスだけにとどまらない。
痩せることによって明るい人生をエンジョイできる。別の人生が開けるのだという提案をする企業なのだ。

それそれ、それが欲しかった、それが着たかったという服の提案は、個々人の身体データを持っているから可能なのだ。
10kg痩せると、こういう服が似合いますよ!というインセンティブをユーザーに持たせることもできる。

様々な分野に関するアイディアを長期的に継続提案できる。これも、userlifetime valueに着目した事例だ。

(4)つけ払い
GMO Paymentは、ZOZOStart Today社)と組んで「後払い=つけ払い」を始めたが、顧客個人ごとのの購買&支払いデータを持っているから、正確な支払信用の判定ができるのだ。
安易で無謀な信用供与をしているのではない。
 GMO Paymentが提供する決済サービスのマージンは85%である。

以上の事例に共通するのは、「データ」と、その「分析&活用」によってこれまで以上の付加価値を生み出しているという事だ。
 

5:金融機関は膨大なデータを保有している
(1)金融機関は膨大なデータを保有している。
部外者から見れば羨ましい
しかし金融機関、特に銀行の人は「止まらない正確なシステム」という点にばかり興味があって、ユーザーの利便性、ユーザー目線でのアプリ開発には興味がなかったと思われる。

だからこそ、「ユーザーの利便性、ユーザー目線でのアプリ開発」をしてきた我々部外者がお役に立てる、と考えている。

(2)例えば、住宅ローンの時に収拾する個人データは宝の山だ。
その顧客が来店する時に、入口のカメラが画像認識して、支店長室へ案内するか、ATMへ案内するかを、即時に判定して対応することは、今でも可能だ。
どの顧客が自社の利益に貢献するのか、それに応じた顧客対応、顧客サービスを実行すべきだ。
それが可能なのに、やろうとしない、興味がない、実に不思議だ、モッタイナイ。

(3)激減したコスト & 目に見えるようになった効果
データ・マイニングは昔からあった。
かつては、1ギガ当たり1億円というコストだった。しかも成果は小さかった
何かやろうとすれば、300~500億円の予算が必要だった。
今は、1ギガ100円だ。それに成果も大きい。数億円の予算で昔の100倍以上の成果が得られるのだから、費用対効果で言えば、効果は100万倍、コストは1/100万になったのだ。昔のイメージで、「無理だ」とか「高い」とかのイメージを持っているのが銀行の経営者かもしれない。

大幅に低下したコストと劇的に向上した成果を考えれば、やるやらないの判断の時期は終わり、ライバルに負けないためにやるのは当然であり、ライバルよりも早く大規模にやるフェイズになっている。
 
(4)すべては、ユーザーのために
銀行が利益を得るために必要な「システム予算の使い方」だが、最優先は顧客が使う業務アプリ開発だ。特にスマホで使いやすい業務アプリだ。
しかも、圧倒的に素早く出す、シンプルに出す、どんどん改良する、という点で他行を圧倒的に凌駕すべきだ。

(5)Time to Market
しかし邦銀のスピードは世界一遅い。非銀行の企業経営者という我々の立ち位置から観察して感じるのは、「やらなくても当面は困らない、政府から守られているから、規制という参入障壁があるから大丈夫、という意識」がいまだに残っていることだ。
海外の銀行や、日本の非銀行の事業会社にスピード感で負けていることを真剣には認識していないようだ。

何でも全て自分ですると、Time to Marketで世界のライバルに負けてしまう。それほど商品やサービスを出すまでのスピード感が求められる時代になった。しかも、短期間で顧客を満足させるレベルの完成度の商品やサービスをローンチするには、期間あたりに投入する「人(システム人材)、物(システム気合)、金」は大きくなっている。

それを一人でやるのではなく、データを持っている銀行とデータを解析するスキルを持っているIT企業が協業すれば、Time to Marketで勝利できる。
メガ銀行は自尊心があるので小規模、部分的にしか協業をやらないが、中小銀行は背を腹に変えられないので決断し始めた。

少なくとも中小銀行に関しては自前主義が不可能なポイントを通過してしまったのだ
日本政府が合併や統合を推進していることは非銀行の企業経営者からすれば非常に納得できる。
中小銀行には手に負えなくなったのが、現代のITのスピード感とシステム規模だと思う。
現在福岡銀行、横浜銀行、北國銀行と顧客向けのサービスの開発をGMOペイメントでは担当している


6:BlockChain & Bitcoin
(1)Fintechを代表するブロックチェーン技術に基づくビットコインだが、決済メカニズムとしては革新的である。
その安全な暗号処理により、偽装決済に対する安全性が高く、また、決済コストがほとんどゼロであることを考えれば、2~6%もの手数料を徴収しているクレジットカード会社、電信送金会社は厳しい競争にさらされるだろう。

(2)ビットコインが通貨の代替の役割を果たすと考える支持者は、「マネーの管理は、中央銀行の総裁や理事会という特定少数者よりも、広範なユーザー基盤の判断(=集合知、wisdom of crowds)と多数の目による監視の方が優れている」と主張する。
しかし、ビットコインのプロトコルは特定少数のプログラマー集団(=非集合知)によって決められており、支持者の主張には矛盾がある。
 
通貨を置き換えるには、大量に存在し誰でも自由に使える存在でなければならない。また物やサービスの交換流通という経済における信用流通の受け皿になるには価値が安定していなければならない。
現状では、量は少なすぎ、価値は不安定すぎる。

(3)ビットコインの新規発行者(ビットコインのトランザクションの認証行為者、採掘者・マイナーと呼ばれている人に認証の対価として新コインが与えられる)は社会全体に責任を持つ公人ではなく、強欲者と紙一重の投機家に近い性格を持っている。
利益追求(強欲と恐怖の振り子)によって動かされるビット・コイン・システムが、政府や中央銀行の政策よりも、安定した社会経済および金融システムを生み出すと、ビットコインの多くの支持者は強く主張しているが、説得力に欠けると思われる。

(4)ビットコインの総量が規定されている結果、新規のビットコインの発行が終わる2144年以降は、ビットコインの所有権移転トランザクションを認証する行為が激減する可能性がある。つまりシステムが維持されないリスクが生ずる。

ビットコインの新規発行によって得られる巨額の利益がシステム維持行為の対価になっているのだから、対価が消えると混乱が起きるだろう。
それを防止するために、発行総量を増加させると「現在の不換紙幣の増刷」と同じ結果(通貨価値の下落)が生じる。

(5)システム的な宿命
匿名性が優先されているので、ビットコインの所有者が設定するパスワード(秘密鍵と呼ばれる)を失念紛失すれば、保有は無に帰す。
秘密鍵情報が悪意の第三者に漏洩すれば、全てを失い、取り戻せない。悪意者から取り戻す公権力も介入できない。

8月に起こったビットコインの分裂騒動の原因は、取引量増加で取引の承認(マイニング)に時間的な大幅な遅延が発生し、その解決策としてのシステム更改が中心的なシステム開発者(コアと呼ばれる、ほぼUS人)と承認者(マイナーと呼ばれる、中国人が80%)との間で利害相反が起きて合意ができなかったのだ。


7:記録の信頼性、証明力
ブロックチェーンは基本的に「記録を残す」事に特化したテクノロジーだ。
ブロックチェーンは「記録を証明」する事ができる。
「証明」というのは今まで信頼のおける第三者によって行われてきた。遺言書は公証役場によって証明される。不動産や会社の登記は登記所に申請する事によって所有権が証明される。婚姻届けは行政によって成立・証明される。預金は銀行によって証明される。

しかし、ブロックチェーンでは、このような「証明」が第三者ではなく「ブロックチェーンに記載されている」という事実のみで行う事がシステム的に可能になっている。これがブロックチェーンーンの一番の特徴だ。

旧来のシステムは、国家によって規制された金融機関が信頼性を担保するが、ブロックチェーンは、改ざんできないというシステムの特性自体が信頼性を内包するということだ。

「証明」をする第三者が不要になる事で第三者に支払うコストを負担する必要がなくなる
 既存の金融機関のシステムの中にブロックチェーンを取り入れる事で「記録を残す」作業を効率的に行う事ができるようになる。

今までサーバーを利用してデジタルデータを残していた金融機関が記録をブロックチェーンで残す事によりサーバーコスト、記録管理コストを削減できるようになり、その削減分のコストメリットでより安価で高品質なサービスの提供が可能になる。

例えば銀行がブロックチェーンで顧客資産を管理する事で手数料を抑えると共に管理に対する人間の操作が少なくなる事で営業時間外でも振り込み処理等を行えるようになる。

このような個別企業の管理者の下で利用されるブロックチェーンを「プライベートブロックチェーン」と言う。


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