人間の経済活動だが、生活の基本部分(=生活必需品部分)だけで構成される経済規模は小さい
軽自動車で必要十分であるにも関わらず、より大型でより高価な車(不要不急の車)を買うのが人間行動の常態だ、という図式を考えてみればわかりやすい。
とは言え、何かのショックが加わり異常事態になると、急速に不要不急が縮小する。
その結果、不要不急部分の需要に依存する企業は苦しくなり雇用を維持できなくなり、人減らし解雇で生き延びようとするが、それでもダメなら倒産してしまう
さて、5月9日金曜日に発表された米国の月間雇用統計の失業率は”14.7%”に大幅悪化した
戦後最悪の数字だ
経済を見る際には失業率よりも「雇用者の増減」のほうが重要だ
ただ、失業率は政治的には重要性が高い。メディアが雇用者の増減よりも分かりやすくてインパクトのある失業率を正面に出して報道するからだ。
その非農業者雇用増減の数値だが、4月の状況は戦後最悪、しかも過去の最悪を10倍上回る最悪状態だ。もっとも1945年よりも現在では労働者の総数が増えているから単純比較はできないが・・・・
米国の人口だが、2019年7月時点で3億2000万であり、1945年ごろの約2.2倍になっている・それを考慮すれば、今回の非農業者雇用増減の悪さは1945年の5倍のネガティブ・インパクトだと考えられる
<< 米国の人口推移 >>
5月8日の統計で驚いたのは、平均時給の急増だ。
通常ならば、平均賃金はじりじりと増加する。これまでもそうだった。
今回の平均賃金の急増は、高賃金者が増加したのではなく、低賃金労働者が大量解雇されたためだ。2020年のコロナ・ウィルス騒動による被害者は低所得者層に極端に偏っているのだ。
民主主義政治的には高所得者も低所得者も一人一票だ。2020年の米国は大統領選挙の年だ。大統領候補はコロナの被害者を味方につけるような選挙運動をすることになる
所得が下がった時の消費者の行動は、
1:自動車や住宅の買い替えという不要不急&多額の消費は先送りする
2:スマホでTwitterは辞めない
3:給与の低下に比例した生活水準の切り下けは実施せず、貯蓄を取り崩して対応するか、借り入れで対応する。それでもダメなら、一気に縮小に踏み切る(住宅ローンの支払いを止める、等)
という順番になる
足元のデータによれば、週間の消費統計はリーマン危機時を上回るペースで縮小している
消費者のマインド(ミシガン大学調査)は、リーマン危機ほどには下がっていない
観察できることは、「コロナに驚いて消費は縮小したけど、この苦境は短期で元に戻る」と希望している消費者がリーマン危機時よりは多いということだ
リーマン危機の時は、2007年後半からジワジワと悪化して2008年9月を迎えたという約2年の悪化プロセスだったが、2020年のコロナ・ショックは2020年2月に一気に来たという瞬間悪化に等しいので「現実の悪さを心底からは納得できない」のだろうし、「この状態が1年以上も続くとは考えたくない」、という素直な感情が多数説なのだろう
「現実の悪さを心底からは納得できない」という感情は、自分のせいではなく他の悪者のせいで、自分は被害者だという感情に直結する。
政治家も「我々はコロナ対策を頑張った。この苦境の原因は自国にはない」という手法で、有権者の目を外国に誘導しようとする。中国悪玉論が欧米の有権者に広がるのは仕方が無いところだ
GDPは投資という点では遅行指標だが、1-3月よりも4-6月が悪化するだろう
弱者は経済の不要不急部分に依存する度合いが高いという事は、企業にも妥当する
株式投資に関しては、V字型回復という期待を横に置いて考えれば、大中企業の重要な支出、戦略的な支出に対応した製品やサービスを提供する企業は被害が少ないだろう。
TV会議の進展と定着により、出張の減少は長く残るだろう。
総じて、ITシステムに対する企業の支出は勝ち組みだろう
なお、失業に関して週間ベースで変化をとらえるために、春山的に計算しているのが下図だ。
最新の失業保険受給者に直近2週間分の新規失業者を加えた人数を「推定失業者=所得を失って困っている人数」と考えて計算している
5月7日に発表されたデータで計算すると、2966万人が所得を失って困っていることになる
労働者の総数は1憶6000万人に仮置きで計算した推定失業率が下図青線だ
毎月正式に発表される失業率は赤線だ
失業率の絶対レベルはさておき、所得を失って困っている人の割合という点では青線の方が妥当しているかもしれない
なお、投資家は未来を見て投資する、楽観的に考える、政府の行動を前向きに解釈する、というのが基本姿勢だ。
つまり既に発生した過去の悪いデータで悲観的になって株を売却することは稀だ。
投資家の株売却は、先が見通せず、政治家もほとんど動かず、不安心理が高まって行く、そういうフェイズで発生する
この点は注意して投資判断する、という原則は忘れないようにしたい
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